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スレッドNo.1278

群集をひとり離れて青き踏む

インターネットサイト「増殖する俳句歳時記」(以下、「増俳」と略)の清水哲男さんが昨年3月7日、腎不全で亡くなられ、今年2月15日追悼会が行われました。わたくしは清水さんとは原石鼎に関する座談会でお会いしていますが追悼会には参加してはいません。以下は猫髭のひとり追悼です。

「増俳」は当初から二十年の予定で、第1期として1996年7月1日から、

  悔しまぎれの草矢よく飛ぶ敗北なり 原子公平

に始まり、2006年6月の10年間(最初の一、二年は俳句仲間の八木幹生、井川博年、辻征夫、小沢幹生も選を担当した)ほぼ単独で毎日一句ずつ俳句の鑑賞を書き続けました。2006年8月からは第2期として今井聖、今井肖子、松下育男、土肥あき子、八木忠栄、三宅やよい、中岡毅雄、小笠原高志、藤嶋務らとともに各人が曜日を担当する形で2016年8月8日まで20年間続き、

  被爆後の広島駅の闇に降りる 清水哲男

という自らの俳句で仕舞われました。総掲載数7,306句という偉業で、「ハイヒール」からは、きっこさん、龍吉さん、ラスカルさん、かもめさん、佳音さんが清水選評によって取り上げられ、第2期の複数選では「ハイヒール」になじみのある俳人では岩淵喜代子さん(WEB詩集鑑賞を寄せてくれた)、太田うさぎさん、齋藤朝比古さん、水星人さん、渡辺夏紀さん(「きっこのブログ」に掲載された「地震百句」を清水さんは読んでいた!)が掲載されました。

「増俳」がなぜ1200万人もの愛読者がいたかと言うと、それは結社や同人や老若男女にこだわらず、清水さんの選と読みが権威におもねらない自由闊達さに満ち溢れていたからで、昔「ホトトギス」の雑詠選に載ると赤飯を炊いて喜んだように「増俳」に載ると国民的な俳句として認められたように喜んだから(有名俳人や主宰や代表クラスも掲載されて嬉しかったと言っていました)、俳人の読みとは真っ向から対峙するような鋭い読みに胸がすくような思いを味わった人も多いと思います。虚子の「酌婦」の句や蛇笏の「をりとりて」のすすきの名句を歯に衣着せぬ物言いで「やり過ぎでいただけない」と真っ向から批判したのは彼が初めてではないかと思います。黛まどかの「B面の夏休み」に対する舌鋒も、そこまで言わなくてもという辛辣さできっこさんの毒舌も霞むほどですが、きちんと良い作品も挙げているから、若手を育てる物言いだと思いました。

わたくしは子規の『俳諧大要』、山本健吉の『季寄せ』、虚子の『ホトトギス雑詠選集』を俳句の三種の神器として推奨していましたが、清水哲男『増殖する俳句歳時記』と石寒太『俳句αあるふぁ巻頭歳時記』は現代俳句のバイブルと言える偉業だと思います。残念ながら俳句メディアは『ホトトギス雑詠選集』は朝日新聞社の朝日文庫も角川文庫も絶版のままだし、「増俳」と『俳句αあるふぁ巻頭歳時記』も抜粋本しか出ていないので、日本の俳句界には満腔の不満を申し上げたい。まあ、「増俳」の20年間の偉業はインターネットサイトに残されているから、わたくしは毎日「増俳」の創刊時から読み直して自分の俳句脳を喜ばせています。

そうそう、二月に入ってからのしりとり俳句がとてもよい流れで気持がいいなあと読んでいました。

  青空にパンと咲かせり春日傘 兎波
  振り返ることなきままに春日傘 杜人
  振り返らず去りゆく人の朧かな ラスカル
  振り返り美人の切手黄水仙 ハジメ2018
   *菱川師宣の「見返り美人図」は高価切手としてつとに有名なので「浮世絵の見返り美人」とかでいいのでは。
  をちこちと振り返り見る梅の花 杜人 
   *雲以外の風景写真もナイス♪
  振り返る三年淡し梅の花 兎波
   *コロナと出さずに「もののあはれ」♪
  待ちかねし刺身定食梅の花 ハジメ2018
  朝東風や黄身の寄り添ふ目玉焼 ラスカル
  梅東風や出荷を待ちし一升瓶 ぴのこ
  酒瓶の形の風呂敷山笑ふ ラスカル
  山笑ふ下りつく宿の露天風呂 ハジメ2018
  路地裏の小さく残る春の雪 兎波
  抜けてきてまた路地に入る春夕べ 杜人
   *俳句では「春夕(はるゆふべ)」と「べ」は省きます。
  路地抜けて大きな広場春の空 ハジメ2018
  地下街の小さきカフェやシクラメン ラスカル
   *「銀河系のとある酒場のヒヤシンス 橋閒石」のラスカル版♪
  古書街にひと日天皇誕生日 杜人
  古書店のレジに触れたる吊し雛 ラスカル
  墨文字の店の品書つばくらめ ハジメ2018

と、ここまで来てストップ。「墨文字」ってなによ(笑)。わたくしは書道部だったし、ラスカルもお習字の先生してるし、ハジメ2018さんも見事な女手の臨書をするけど、「墨文字」って日本語ないよ。「墨跡」「墨付き」「水茎(みづくき)」「手書(き)」「能筆」とかが一般に習字、書道で使われる言葉だと思います。品書だから自己表現を目指す書道ではなく見やすく美しい文字を書く習字になりますね。草書ではなく楷書で平仮名混じり。と思っていたら、きっこさんが褒めたので黙りました。(*^▽^*)ゞ。
あとはハジメ2018さんが御自身でお考えください。

引用して返信編集・削除(編集済: 2023年02月28日 03:20)

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