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スレッドNo.1555

田水引く水口を水ほとばしり

杜人さん、いよいよ波多野爽波の言う「農のくらし」が始まりましたね。「田水引く」は「代田」の傍題で初夏の季語ですが、わたくしの郷里の茨城県の那珂湊はゴールデンウィークの頃に水口(みなくち)から水を引くので、ゴールデンウィークに帰郷すると那珂湊線は一面湖の中を走るような光景が広がります。

それで思い出したのが「俳句研究」に連載されていた本宮哲郎の「田んぼの一年」で、「俳句研究」の休刊により連載途中で終わったので遺憾に思って「週刊俳句」に、

本宮哲郎の「田んぼの一年」だけは地味なので一本になるかどうか、歳時記は農暦の影響が大きいが、この「田んぼの一年」こそ稲にまつわる農作業を通した得難い現代の農暦で、少なくともこの連載を全うしてから潰れて欲しかったと思う(季刊になって復刊した「俳句研究」には無かったので落胆した)。(2008-12-07)

と書いたが、林誠二によれば平成20年に完結したということだが、林誠二の記事は2008-01-06だから、本宮哲郎は「河」と「麓」の同人だったのでわたくしの目の届かないそちらに続きを連載していたとしたら、「田んぼの一年」は俳句と写真入の掲載だったので全俳人にとって本物の農作業がどういうものかより身近に感じられると思うので、わたくしが編集者だったら絶対に本にして残したいところである。「増俳」などに載っていた本宮哲郎の句を引いておきます。

  花冷えの田より抜きたる足二本
  春蒔きの種ひと揃ひ地べたに置く
  無人駅牛乳瓶に草の花
  月の水ごくごく飲んで稲を刈る
  稲架(はざ)を組む夫婦夕焼雲に乗り
  牛逃げてゆく夢を見し麦の秋
  牛飼ひが牛連れ歩くさくらかな
  馬小屋をざぶざぶ洗ふ十二月
  石蕗の花母声あげて吾を生みし
  月に脱ぐシャツの農薬くさきかな
  稲架乾く匂ひが通夜の席にまで
  夕青田見てゐる父のやうな人
  父の日や日輪かつと海の上
  冬紅葉海の夕日の差すところ
  雪月夜わが心音を抱き眠る 平成25年(2013年)12月18日死去83歳。

引用して返信編集・削除(編集済: 2023年04月25日 00:39)

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