三囲の水辺の沙羅の花こぼれ
三囲(みめぐり)とは東京都墨田区向島に在る神社で宝井其角が雨乞いの句を「ゆたか」を折り込んで詠んだ「遊(ゆ)ふた地や田を見めくりの神ならは」の句を奉じたところ降雨を見たので有名だが(其角の『五元集』には「牛島三遶の神前にて 雨乞するものにかはりて 夕立や田を見めくりの神ならは 翌日雨ふる」と載っている)、ちょうど初夏のころ京都から西野文代さんを招いて三囲に行ったところ沙羅の花が咲いていて、第一句集の『沙羅』の、
ひとめぐりして来て沙羅の咲く下に 西野文代
の沙羅の花とはこれかと初めて見たので感銘を受けたことがあり、わたくしの俳句の季語の記憶はこういうめぐり逢いで心に刻まれてきたように思う。ところが今日図書館のそばを抜けて自転車の駐輪場へといつもの道を歩いていたら小さな白い椿のような花が落ちて来たので木は沙羅のようにすべすべしているが、こんな小さな花ではなかったようなと思っていたら、植木屋の娘さん、と言ってもお婆さんだが、花の小さい沙羅なので姫沙羅(ひめしゃら)というのだと教えてくれた。まさか自分の住んでいるそばに師匠ゆかりの花があるとはと喜んだ。
ところで、お客の団地に群れて咲いていた小さなピンクの花で中心が紅い花の名前がわからず、図書館で植物図鑑を調べたり植木屋さんに聞いたりしてオキザリス(かたばみ)の仲間ではないかとまで絞り込んだはいいが、紫かたばみと紅かたばみの違いはわかったが紅かたばみも芋かたばみも花の見分けがつかず、植木屋はかたばみは交配が進んで800種類ぐらいあると脅かすし、ほとほと困っていたら、葉っぱがクローバーに似ているのだが、光沢があるかないかで紅か芋かがわかるそうで光沢のない葉っぱの芋かたばみと分かった次第。いやあ、一か月近くかかったが、お客も喜んでくれてめでたしめでたし。(*^▽^*)ゞ。