小鳥来る雪隠詰めになりをれば
先週から鬼の霍乱で体調を崩していた。と言ってもコロナとか夏風邪ではない。わたくしはヘルパーなので春夏秋冬公衆衛生は守っているし、仕事以外は引き籠りなので人混みには出ないし、顧客が全員コロナでも濃厚接触者の筆頭なのにわたくしはいつも陰性だった。ワクチンは打たない。体の中に異物を入れたくないのだ。青魚、納豆、蜆の産地で生まれたから医食同源で自己免疫を強化し、顧客以外に会うのは家族だけである。
で何が猫さんに起こったかと言うと、文字通り雪隠詰めで、トイレに座ったまま一夜を明かしたという情けない尾籠な話である。暑いときには食欲がなくなるもので、毎日ソーメンでは体も持つまいとカレーを作った。いつもカレーはわたくしは十人分くらい作るので味を馴染ませるために出来上がっても一晩寝かせるが、カレー粉はいつも海軍カレーのベースとなった英国製のCrosse&Blackwellのカレーパウダーか横須賀海軍カレーの中辛パウダーをベースにして作る。中村屋のカレーパウダーやS&Bの赤缶パウダーも使うが、面倒な時はS&Bのゴールデンカレーやハウスのジャワカレーのルーを使う時もある。安いうえに手持ちのスパイスや醤油、ウースターソース、ケチャップで補充するとなかなか乙なカレーが出来るからである。スパイシーなカレーが好きなので辛みは青唐辛子やサルサソースで追加する。
しかし、先週の金曜日は「バリ辛」という名前と安さに引かれてS&Bゴールデンカレー「バリ辛」を買ってみたので、出来上がりに二個入れてみて味見をすると相当辛い。2パックで四個で八個の二個でこの辛さだから唐辛子やサルサソースを追加する必要はなく、はふはふ言いながら土曜日の夜に「ハートビート」という韓国ドラマ(人間になりたいという人間よりも人間らしいドラキュラが主人公で、「ヴィンチェンツォ」でサイコパスの殺人鬼を演じたオク・テギョンが見事な演技を見せる。2PMというアイドルグループの歌手だが、冷酷無比な殺人鬼から人間味あふれるドラキュラまで演じる韓国のアイドルには心底驚く。日本のアイドルが悪役を演じることなど考えられないからだ)全16話を土日ぶっ続けで楽しもうというわけだが、深夜近くになって胃が痛みだし、続いて腸がぎゅるぎゅる鳴り出して大腸から直腸まで次々下りて来るので慌てて雪隠に屈んだら、怒涛のような下痢が始まり、吐き気もするので、余りの辛さに内臓が氾濫しているようで辛さを出すために麦茶を1リットルくらい飲んだが、これがぴゅうぴゅう飲むそばからきゅるきゅる言いながらシャーシャーと出て、動きが取れなくなり、明け方まで便座にすわっていたが、眠くなって欠伸をしたら、驚いたことに欠伸でもシャーと出るではないか。しょうがないからお客用のオムツと尿パッドを履いて寝たが、寝小便ならぬ寝水便は生まれて初めてでおむつセットがあって良かったわあ、さすがヘルパー備えあれば患いなし。
どうやって治ったかと言うと、正露丸を三粒朝昼晩飲んで黄門様にメンターム塗って(薬はこの二つとコロナにかかった時の備えで葛根湯がひと箱。これは風邪薬だがコロナも風邪の一種だから、って葛根湯でコロナが治せると思う馬鹿は俺ひとりか)バナナを毎日十本食べたら落ち着いた。勿論このくそ暑い中オムツにパッド付で自転車を走らせて仕事には通っていた。96歳のお婆さんに話したら大笑いしていた。カレーは勿体ないから具材だけ掬ってスープは捨て、また「バリ辛」抜きで作り直した。今度は黄門様も安泰でした。店にクレームを入れようと思ったら、西友にもサミットにも跡形もなく「バリ辛」は消えていた。狐に抓まれたようだ。ネットで調べたら確かに販売されていたが、二度と買うことはあるまい。皆さんも「バリ辛」に御注意を。なんか名古屋のカレーライス殺人事件を思い出したなあ。