猫連れて春を探しに行つたきり
俳句は鉛筆一本と手帳があるだけで幸せになれるこの世で一番幸せの目線が低い文芸である。「定点観測」と言って身の回りの一週間ごとに変わりゆく季節を俳句にしてゆくことで自分の好きな季語も増えてゆく「猫髭歳時記」が増える楽しみがある。好きな季語が増えると歳時記を見なくても心の中から季語が出て来る。そういう季語は動かない。例えば晩春の季語で「雀隠れ」という季語がある。春になって萌え出た草が成長してようやく雀の姿を隠すほどに伸びたさまを言う。故西野文代師匠の好きだった季語である。まだこの季語が心の中から出てくれる機会はないけれども必ず出て来ると信じて春を歩く。