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スレッドNo.562

新松子風の翼の種宿し

十五夜の満月を見て十三夜の満月を見ないと縁起が悪いというのは話には聞いていて知っていましたがきちんとわかったのは樋口一葉の『十三夜』を読んだからです。嫁ぎ先の娘を案じる母親が十三夜の月見の品を娘に届けたい食べさせたいという親心で案じると娘が顔を出す時に話すのが「片月見」です(「青空文庫」で旧字旧仮名、新字新仮名で読む事が出来ます)。

今宵は舊暦の十三夜、舊弊なれどお月見の眞似事に團子をこしらへてお月樣にお備へ申せし、これはお前も好物なれば少々なりとも亥之助に持たせて上やうと思ふたけれど、亥之助も何か極りを惡がつて其樣な物はお止なされと言ふし、十五夜にあげなんだから片月見に成つても惡るし、喰べさせたいと思ひながら思ふばかりで上る事が出來なんだに、今夜來て呉れるとは夢の樣な、ほんに心が屆いたのであらう、自宅で甘い物はいくらも喰べやうけれど親のこしらいたは又別物、奧樣氣を取すてゝ今夜は昔しのお關になつて、外見を構はず豆なり栗なり氣に入つたを喰べて見せてお呉れ

というくだりを読んで、十五夜と十三夜と両方見ないと「片月見」と言って縁起が悪いのかとか、十三夜が豆名月とか栗名月と言われるのはこれかと教わって以来もう随分長いが、七夕と違って(新暦だと梅雨のど真ん中だからだいたい土砂降りで二人は会えない残酷な逢瀬になる)「舊暦の十三夜、舊弊なれど」と言っているので旧暦だとほとんど記憶にあるのはああ片月見にならなくて良かったということが多い。今年はいきなり夏日から初冬に飛んで秋の終わりの長雨にかかったかと思ったが埼玉では煌々とした月の出と左横に大きな木星が輝いていたので東京はわからないが今年は新宿で中秋の名月を越谷で後の月を見られたので年のせいで両肩は痛むがまずまずの日々是好日が続くことを願っている。「舊弊なれど」他愛ない験担ぎは日常を支える信仰のようなものだ。少なくとも株の上げ下げで血圧の上げ下げが連動するよりは健康的だろう。

写真は夜道で撮ったので露出の設定を間違えて明るくし過ぎたらしく月と木星が爆発してしまった変な写真。どうも新しいデジカメは余計な機能が多過ぎて困る。見えたとおりに撮れればいいんだよ。

引用して返信編集・削除(編集済: 2022年10月10日 01:56)

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