逆光に一輪垂れし冬椿
今日はやっとこの快晴で、午前中の仕事を終えて洗濯と冬物へ「更衣」、って今頃。そうなのよ、めんどくさがりで、というのが大方の理由だが、自転車で走り回るし、車椅子を二時間押し捲る介護もあるしで、結構体を使うから着膨れると汗掻くのでヘルパーの衣替えは夏は早めで冬は遅めになりがちで、俳人は季節は肌で感じるもんだ、エアコン、ケッ夏は暑いし冬は寒いの当たり前、冬が暑いかバッキャロウ、暖房つけて冬の句詠めるか芭蕉が呆れるぞとばかりに痩せ我慢を通して来たが、俳句世間のしがらみからおさらばして早や五年、すっかり普通の老人になって、昨日のように朝晩の外気が4℃近くに冷え込むと室内も10℃を切るから、17℃がセーターを着るのに適温というのを思い出してセーターを探せど、積んどくだけだからどこの行李に入っているのかわからず、とりあえず防寒着が出て来たからそれを着て、TVドラマ、北大路欣也の車椅子の鬼塚一路警部補がいい『記憶捜査3』、『相棒』、『科捜研の女』、中井貴一がいい『トラベルナース』、『孤独のグルメ』を見る。リバイバルで『終着駅』シリーズや『必殺仕事人』『JIN-仁』も見る。『JIN-仁』は原作の漫画も全部買って読んでて面白かったが、TVドラマもTBS80周年記念だったかで豪華絢爛で武田鉄也の緒方洪庵がミスキャストだった以外は素晴らしい演技で、特に花魁の野風は絶賛だったのでもう正続10回以上見ているが何度見ても野風はいいなあ。映画は本と違って見てるだけでいいから楽。本はページをめくる手間と字を読む手間がある。まあ、それがしみじみとしていいから、また今日も句集やミステリーなど古本屋へ注文してしまった。電子本は生理的に駄目です。やっぱ紙と本の装丁でないと読んでる気がしない。その意味では映画は映画館の大画面で見るのが一番だが、前の奴の頭が邪魔で、一人で煙草を吸いながら酒を飲みながら35インチのディスプレイで見る自由で満足である。
わたくしの辞書には「飽きる」ということがない。十代の終りに家業の倒産というどん底に落ちて「飽きる」という贅沢な生き方が出来ず、板金工という肉体労働者として休みなく働き通しだったので、トンネルを抜けたら三十歳の中年だから、何かに入れあげると「飽きる」ことを知らないからずっと入れあげたままで、気が付いたら白髪のお爺さんで、御覧の通りである。
例えば、きっこさんに『ホトトギス雑詠選集』だけをずっと読みなさいと言われると、朝日文庫と角川文庫を買って来て半年だったか読んで、しかし、元になる大正四年から虚子が選び続けた全44巻の『ホトトギス雑詠全集』を全巻日本中の古本屋からコレクションして、なぜ虚子が膨大なホトトギス雑詠投句の中から精選したのかを辿ると、正直、「客観写生」だ「花鳥風詠」だのお題目や俳論などどうでもよくなる。良い俳句に出会う喜びに勝るものはないという作品だけが残る。きっこさんの指導を受けてわたくしがたどり着いたのはそういうひろびろとした場所である。そこにはこの写真のような美しい自然が微笑んでいてくれるかもしれない。