八月のカレー名づけて盆カレー
かもめさんの句は、平成17年(2005年)9月の「ハイヒール句会」のきっこ特選です。あたしは以下の鑑賞文を書きました。
ああわたし背負はれ花野花野かな かもめ
同じ「花野花野」と言う繰り返しでも、中七に置いてしまうと、花野同士が隙間無く密着するため、一面の広い花野、つまり、現実世界の花野だけを表現するための繰り返しと言うことで終わってしまいます。しかし、この句の場合は、句またがりを利用しているので、声に出して読み上げた場合に、「ああわたし/背負はれ花野/花野かな」と言うように、2つの花野の間に一拍の空間が生まれます。そして、この空間こそが、この句のもっとも重要な役割を果たしているのです。
この句は、「ああわたし背負はれ花野」と言うところまでが現実世界であり、一拍の空間が次元を反転させ、2つめの精神世界の「花野」へといざなって行きます。つまり、2つめの「花野」は、幼いころの思い出の花野であり、夢の中の花野であり、未来の花野でもあるのです。そして、現実の花野から夢の花野へと変化して行く過程にあるすべての「思い」は、句末の「かな」によって昇華されて行きます。
俳句は、「たった十七音しかない」と考える人もいるようですが、この句のように、音と音の隙間や切れなどを生かせば、無限のキャパシティーを持った挨拶となりうるのです。(以上)
猫髭さん、初期の「ハイヒール句会」の「きっこ特選」の鑑賞文は、すべて保存してありますので、必要ならおっしゃってくださいね。