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スレッドNo.727

あたしの細胞の過半数が秋

皆さん、こんばんは。

「新酒」を意味する「新走り」の句が何句かありましたが、下五の表記が「新走り」だと一句が締まりませんね。
もちろん「新走り」という表記は正しいのですが、ここは「夏休み」を「夏休」、「夏の果て」を「夏の果」と表記するように、送り仮名を省略して「新走」と表記したほうが、一句がグッと締まります。

先づは取る可杯(べくさかづき)や新走 三橋敏雄

拭きこみし酒蔵の階(きざはし)新走 深見けん二

病床に届けてくれし新走 田畑美穂女

女人とも淡くなりけり新走 藤田湘子

飲めといふあと無口なる新走 辻美奈子

これらの句のように、「新走り」を下五に置く場合は、送り仮名がないほうが「どっしり」と座りが良くなり、お酒の持つ本意にもイメージが添うようになります。

でも、逆に、

新走り身の影をおく畳かな 桂信子

という句のように、上五に置く場合は、続く中七の冒頭が漢字表記の場合は、送り仮名を用いないと上五から中七へ漢字が連続してしまい、一句の視覚的な流れが渋滞を起こしてしまいます。
この句のように「新走り」と送り仮名を用いれば、視覚的な渋滞が緩和され、するすると詩が流れ始めるのです。

でも、中七が平仮名で始まる句の場合は、上五を「新走」と表記したほうが良い句もあるのです。
ですから、「新走り」と「新走」のどちらが良いかということではなく、状況に合わせて最善の表記を選択するということなのです。

同じ言葉を漢字で書くか平仮名で書くか、送り仮名を表記するか省略するか、これは個々の詠み手が自分の感性で判断&選択することなので、他人のあたしが「こうしろ」と強制することはできません。

しかし、せっかくの素晴らしい句が、表記ひとつで「もったいない句」になってしまった例を数えきれないほど見て来たあたしとしては、「送り仮名のある季語を下五に置く場合は、送り仮名は基本的に省略すべき」ということをアドバイスしておきますね。

引用して返信編集・削除(編集済: 2022年10月16日 23:00)

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