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スレッドNo.884

篆刻の線の切れ切れ冬浅し

>冬山を背に黄金のたつこ像

suzumeさん、俳句でたつこと言えば星野立子ですが、お金を積むと自分の句碑が庭に立つという星野椿さんが館長の「鎌倉虚子立子記念館」には行ったことがありますが、彼女の銅像建った・・・はずはないと調べたら仙台の日本一深い田沢湖の龍になったという伝説の辰子像ね。戦後を代表する彫刻家と謂われる舟越保武が作ったブロンズは見ていませんが息子の舟越桂は大好きな彫刻家です。コペンハーゲンの人魚姫はかもめの糞だらけだったので(欧米人は落葉とか糞とか自然のものは掃除しないのかというぐらい不精)横浜大桟橋の入口の人魚姫は糞はないので肩に触って見物しましたが、湖の岸辺の黄金のたつこ像って不気味。(*^▽^*)ゞ。

ジャズヴォーカルにビリー・ホリデイという歌手がいる。Lady Day(貴婦人)と呼ばれた歌手で、「文學界」(2022年11月号)がどういうわけか「ジャズと文学特集」だったので毎年ノーベル文学賞候補になっては落ち続けている村上春樹がジャズに詳しいので巻頭インタヴューでビリー・ホリデイの話をしていて、彼女の魅力を平凡な歌でも彼女が歌うと素晴らしい歌になると言っていたのを見て、今週の「きっこのメルマガ」の「季節の言葉」の「冬浅し」の季語には、やっと冬が終わって春になる喜びが溢れる「春浅し」に比べるとそれ以外の季節の「浅し」は余り俳人に好まれなくて秀句も少ないのを敢えて選んでこの季語の内蔵する本当の魅力を再発見したいときっこさんが語りだすと、俳壇のレディ・デイだなあと舌を巻く説得力で、平凡な句でもみんな非凡に見えてしまうという、まるで柴田宵曲の俳話を見ているようで、きっこさんもとうとうここまで高きに上ったのかと感無量でした。名句といわれる句は誰でも言えますが、一見平凡な句と見えてもそこに季節の息吹を読み取るきっこさんのまなざしには脱帽です。

そうそう、お母さんがまた凄い。この季節、ずっと車椅子介助で「これなんの実だろう」と思っていた善福寺川沿いのセイタカアワダチソウにからまる実を「ヒヨドリジョウゴ」だと即座に判るとはふけとしこさんのような「歩く歳時記」なり。しかも『万葉集』巻第十の2167、

  秋の野の尾花が末(うれ)に鳴く百舌鳥(もず)の声聞きけむか片聞く吾妹(わぎも) 

を暗誦されるに居たってはもうひれ伏すしかない。というのは、わたくしは岩波文庫の佐々木信綱の新訓で偶然覚えていたので(いつもPost-itを貼り付けるのにどういうわけかこの歌のページだけが折ってあった)、

  秋の野の尾花が末に鳴く百舌鳥の声聞くらむか片待つ吾妹

とは七七が違うなあと見直すと、信綱版には下に、【うれに或すゑに】【片待つ「片待」(略)或片きく「片聞」】とあるので、信綱が典拠とした寛永版本の底本と違う解釈もあると信綱は注釈で残したのだろうと、図書館に行ったら、もうそんな古い版は岩波にもないですよと司書に言われて見たら、ほんとだ、上中下三巻だった岩波文庫は、原文上下二巻も入れると全七巻のセットになっていて、岩波の新古典文学大系を採用している。わたくしは古い岩波の古典文学大系で読んでいたので、万葉集の定本は十九もあるので万葉仮名という漢字のみの底本の解釈はそれこそ評釈者の数だけ解釈が分かれるので正解はまだないというのが現状だが、最新版は校本に寄って原文が異なるので原文が一致している校本の多い解釈を採用しており、

  秋野之 草花我末 鳴百舌鳥 音聞監香 片聞吾妹

  秋の野の尾花が末に鳴くもずの声聞きけむか片聞け吾妹

が岩波書店と小学館の最新表記になっている。

きっこさんのお母さんの覚えていたのは最新の解釈だが、最後の「片聞け吾妹」が信綱版の注釈の「片聞く」になっており、最新の新訂では「片聞け」だが、信綱が挙げた「片聞く」もあるのだろう。万葉集の註解は契沖、宣長はじめ枚挙に遑がないのでそこまでは調べる気もないが、この母にしてこの子ありと、今回の「きっこのメルマガ」 第190号は深く心に残りました。

わたくしも小さい頃から母の旧字旧仮名変体仮名の短歌や文學全集ばかり読んで育ったのだ。トランプよりも百人一首で育った。父は理系だったから文学には暗かったが、漱石全集の第一巻の「文学論」は父の所蔵だった。恐ろしく難解で父はちんぷんかんぷんだったと言っていたが、わたくしも同感だった。夏目漱石の「文学論」に言及したのは吉本隆明だったが、彼の『言語にとって美とはなにか』は三回読んだがやはりちんぷんかんぷんだった。(*^▽^*)ゞ。

きっこさんの話はちんぷんかんぷんではないので『きっこのメルマガ』の「今週の前口上」の政治の話は苦手だが(わたくしは一票の権利を行使するだけの庶民に過ぎないという立場である)「今週のトピック」(まさかきっこさんも「孤独のグルメ」のファンだったとは)と「季節の言葉 」「今週のシミチョロ」は大好きで、特に「季節の言葉 」はわたくしにとっての聖典にひとしい。

写真は善福寺川緑地の和田堀池の櫨紅葉の水鏡を泳ぐ金黒羽白(キンクロハジロ)で昨日飛来した水鳥である。

引用して返信編集・削除(編集済: 2022年11月12日 03:37)

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