喫煙
禁煙しだしたのは、47歳だったと思うが、たばこを吸い始めたのはいつ頃だろう。
中学生の頃、たばこをすっていなかったようにも思うが、記憶の断片をたどると既に喫煙していたようにも思う。
半世紀ほど前のことなので、あやふやなところはあるが、中学生の頃にすでにたばこを吸い始めていたようだ。
煙草を吸うなどばかげた行為だと今なら思うが、あの頃は精一杯背伸びして、大人の世界をのぞいていたように思う。
ショートピースを橋の上で吸いながら、詰問されれば、年齢などをどうごまかそうかなどと考えていたことを思い出す。
喫煙する中学生に詰問するような人も現れず、妄想は妄想で終わってしまった。
慌てずとも、堂々と煙草を吸える年齢にすぐになるのだから、あの頃の私は、何をそんなに急いでいたのだろう。
自分自身で、二十歳まで生きていられないように勝手に思い込んでいたところがある。
そんな妄想を抱いた原因はそれなりに思い浮かぶが、思春期の誰にでもある揺れる心模様だと言えばそれまでである。
存在が「ある」のは「いま」においてだけであるそうだが、まさしく、そうなのだろう。
中学生の私は、高齢者の「いま」の私のなかにしか存在しない。