論語でジャーナル’25
5,曽子曰く、能を以て不能に問い、多きを以て寡(すく)なきに問い、有れども無きが若(ごと)く、実(み)つれども虚(むな)しきが若く、犯されて校(むく)いず。昔者(むかし)、吾が友、嘗(かつ)てここに従事せり。
曽先生が言われた。「豊かな才能を持ちながら、才能の乏しい者にも質問し、広い知識を貯えていながら、無知な人にも質問し、あってもないように、充実した人格であってもそうでないように自分を見せ、他人から喧嘩を仕掛けられても反抗しない。私の旧友(顔回)は、こんなふうに行動していた」。
※浩→亡くなった友・顔回の謙虚な人柄を追憶したものとするのが一般の説です。
私にとってテーマが2つあります。1つは、「見栄の大森」を改めて謙虚な生き方をすること。もう1つは、充実した人格を持つ旧友について。
旧友のお話はさておき、「謙虚な生き方」は肝に銘じています。ここでは、「能/不能」、「多/寡」、「有/無」、「虚/実」と4点が二項対立的に並べられていますが、要するに、「あってもないかのように(謙虚に)行動する」ということでしょう。
「かのように」というと、アドラー心理学は「かのように心理学」です。意味はずいぶん違うと思いますが。「攻撃されても反抗しない」というのは、アドラー心理学では、Never fight, never give in.(闘うな、されど迎合するな)とか、権力闘争から降りるとなりますから、まったく無抵抗になされるがままを受け入れるという意味ではないです。
自分に豊かな才能があっても、それほどでもないと思われる人の意見にも耳を傾ける。こうして自分の見解が偏らないように。自分の人格に自信があっても(もとより自信はありませんが)、それをひけらかさないで謙虚にふるまう。人から喧嘩を仕掛けられても、真っ向から反抗しないで、さらりとかわして降りるのがいい。かといって安易な妥協はしない。
『老子』第六十三章に「無為をなし、無事を事とし、無味を味わう。小を大とし、少を多とし、怨みに報ゆるに徳をもってす。難をその易に図り、大をその細になす。天下の難事は、必ず易よりおこり、天下の大事は、必ず易よりおこる。ここをもって聖人は、ついに大をなさず、ゆえによくその大をなす。それ軽諾は必ず信すくなく、易(やす)しとすること多ければ必ず難(かた)きこと多し。ここをもって聖人はなおこれを難しとる。ゆえについに難きことなし」とあります。
『論語』の「憲問篇」には、「ある人曰く、徳をもって怨みに報ゆるは、如何。子曰く、何をもってか徳に報いん。直きをもって怨みに報い、徳をもって徳に報ゆ」とあります。
「直きをもって怨みに報い」の「直き」は「まっすぐ」と訳されていますが、どういうことかよくわかりません。「真っ直ぐな心」なら「徳」のようにも思えますが、悪意には真っ直ぐに悪意で報いると読めないこともありません。これだと応報的であまり美しくないです。「怨みに徳で報いる」のほうが実行困難ですが、美しいです。仏教では『法句経』に、「実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息(や)むことがない。怨みを捨ててこそ息む。これは永遠の真理である」とあります。サンフランシスコ講和条約でセイロン(スリランカ)代表のがこの言葉を引用して日本を弁護したことは有名なお話です。詳しい説明をネットから引用します。
→引用:1951年のサンフランシスコ講和条約締結後、世界で一番早く正式に日本と外交関係を結んだのもスリランカであった。当時の大蔵大臣で、後に、初代スリランカ大統領になるジャヤワルダナ氏が尽力したのだった。スリランカが、「英連邦内自治領セイロン」であった当時、随一の実力者だった彼は、サンフランシスコ講和会議に出席する。席上、諸外国からは、「日本に今、この段階で平和を与えるのは、もってのほか」「日本は南北に分割して統治すべき」「日本を独立させるのは時期尚早」などなど、さまざまな議論・意見が出る中、ブッダの言葉を引用し、こう語った。
「戦争は戦争として、終わった。もう過去のことである。我々は仏教徒である。やられたらやり返す、憎しみを憎しみで返すだけでは、いつまでたっても戦争は終わらない。憎しみで返せば、憎しみが日本側に生まれ、新たな憎しみの戦いになって戦争が起きる。戦争は憎しみとして返すのではなく、優しさ、慈愛で返せば平和になり、戦争が止んで、元の平和になる。戦争は過去の歴史である。もう憎しみは忘れて、慈愛で返していこう」と。
対日賠償請求権の放棄を明らかにするとともに、 わが国を国際社会の一員として受け入れるよう訴える演説を行った。この演説が、当時わが国に厳しい制裁措置を求めていた一部の戦勝国をも動かしたと言われ、その後のわが国の国際復帰への道につながる象徴的出来事として記憶されている。←引用終わり
関連して、マレーシア・マハティール首相の演説が、日本を怨み続けるという某国と違って、日本人に誇りと自信を呼び戻してくれます。
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https://www.dailyshincho.jp/article/2018/06080631/?all=1