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スレッドNo.124

論語でジャーナル’25

3,子曰く、麻冕(まべん)は礼なり。今純(いと)なるは、倹なり、吾は衆に従わん。下に拝するは礼なり。今上に拝するは泰(おご)れるなり。衆に違(たが)うと雖(いえど)も、吾は下に従わん。

 先生が言われた。「麻の冠は礼にかなっている。現在絹で作っているのは倹約のためだ。この点では自分は、大衆のやり方に従う。君主に招かれたときは、御殿(座敷)の下に降りてお辞儀をするのが礼だ。現在、御殿(座敷)の上でお辞儀をするのは、奢(おご)りたかぶっているのだ。この点は大衆と違っても、(私は)御殿の下でお辞儀をすることにしよう」。

※浩→「麻冕(まべん)」は、麻で作った冠です。冠の上に長方形の板が乗っていて、その裏表に、元来は「麻糸」を貼っていたのが、いつしかそれが純(絹)に変わりました。当時は、麻より絹のほうが安かったんです。で、孔子は、「古い掟には反するが、自分も異を唱えず、みんなのするとおり、絹を使おう」と。反対に、臣下が君主からもてなしを受ける場合、座敷から中庭に降りでお礼を言うのが本来の掟でした。それがいつの間にか、座敷にいたままお辞儀をしている。孔子は、「これは傲慢というものである。自分は、みんなのやり方とは違っても、中庭に降りて下でお辞儀をする」と言いました。
 「礼」というのは日本では日常生活からすっかり消えて、冠婚葬祭や習い事や学校儀式の中でだけ行われているようです。孔子は周公・旦の礼の制度をお手本にすることができました。現在の暮らしの中では、どうすれば「礼」を行えるようになるでしょうか?儀式や習い事の中で実行しても、日常生活に戻ると、とたんに無作法になるのはどういうことでしょうか。歌舞伎にはしっかり伝承されています。上使をお迎えする場面だと、「ご上使のお入りー!」との声が響くと、太鼓がどーんと鳴って、花道の揚げ幕がシャリッと開いて、正装した上使が登場します。それまで舞台の座敷の上座(かみざ:向かって右)に座っていた主(あるじ)は、上座へ上使を通すために、自分は下座(しもざ:向かって左)に下がります。「これはこれはご上使様にはようこそのご入来、して、こんにちの御用向きは?」と言うと、上使は「上位ー!」と上から預かった書状を示します。主は「ははー!」と平服。こういう厳かなシーンをお芝居で観るていた観客は、芝居が終わって退場するとなると、とたんに不作用千万です。幕が完全に閉まるか閉まらないかのタイミングで、すでに一部の観客がさっと通路を目がけて立ち上がり、階段やエスカレーターに溢れています。我先に退場しよう人々に圧倒されて、弱気な人はなかなかエスカレーターに乗れません。もっと言えば、お芝居が始まってから、続々とロビーから客席に戻る人もいます。テレビの中継を見ていると、すでに舞台ではお芝居が始まっているのに、ロビーにいた人たちが遅れて、ぞろぞろ入場してくるので、人の頭がいくつも画面に映って、舞台を遮ります。東京の歌舞伎座のような日本を代表するような劇場でそうなのです。中には、演出上の都合で、開幕の遅れた人を客席に入れない演目もあります。舞踊の「藤娘」は、はじめ場内の非常灯まで消えて真っ暗です。そこへ「チョーン」と木が入ると、途端に舞台全体に照明が入ります。中央に藤の枝を肩にかけた「藤の精」が立っています。客席から「大和屋ー!」とか声がかかります。長唄連中の演奏が始まり、板東玉三郎さんが艶姿をたっぷり披露してくれます。また、「仮名手本忠臣蔵」では「四段目」 の「判官切腹」の場面は、昔は「通せん場」と言われて、開幕に遅れると、客席に入れなかったそうです。無理に入ろうとすると、係員が「只今、判官様ご切腹につきお通しできません」と制したそうです。お客のほうも、それで納得して、「切腹」が終わるまでロビーで待ったと言いますから、悠長な時代でした。
 判官切腹の段というのは次のとおりです。判官(浅野内匠頭の歌舞伎での名称)の切腹に立ち会うために、石堂右馬之丞、薬師寺次郎左衛門が上使として来訪した。情け深い石堂に比べて、師直(吉良上野介の歌舞伎での名称)とは親しい間柄の薬師寺は意地が悪い。一間(ひとま)より判官が出てきて上使に応対すると、「判官は切腹、その領地も没収」と、上意を申し渡される。判官はかねてより覚悟していたのかその言葉に動ずる気色も無く、「委細承知仕る」。そして着ているものを脱ぐと、その下からは白の着付けに水裃の死装束(しにしょうぞく)が現れる。判官はこの場で切腹するつもりだったが、せめて家老の大星由良助(大石内蔵助の歌舞伎での名称)が国許から戻るまでは、ほかの家臣たちにも目通りすまい…と待つが、なかなか現れない。判官は由良之助の息子・力弥(大石主税の歌舞伎での名称)にたずねた。「力弥、力弥、由良助は─」「いまだ参上仕りませぬ」「…エエ存生(ぞんじょう)に対面せで残念、是非に及ばぬ。これまで」と、刀を腹に突き立てる。そのとき花道をバタバタと、大星由良助が国許より駆けつける。「由良助、待ち兼ねたー」「ハア御存生の御尊顔を拝し、身にとって何ほどか」「定めて仔細は聞いたであろう」と判官は刀を引き回し、薄れゆく意識の中で最後の力を振り絞り、「この九寸五分は汝へ形見。我が鬱憤を……」と、喉をかき切って事切れます。
 またまたとんでもない方向へ脱線しました。はなはだ失礼を申しあげました。

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