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スレッドNo.100

裏第四十六話 デタラメな俳句サイト

あたしが、この「きっこのハイヒール」を開設したのは、ネット句会のあまりのレベルの低さに嫌気がさしたことも理由のひとつですが、先月、あちこちの俳句サイトを覗いて回ってみたら、相変わらずのデタラメが横行していて、呆れ返ってしまいました。

毎月、700句前後もの投句がある大きなネット句会では、先月(平成16年2月)の句会で、次の句が最高得点になっていました。

  春うらら母を追い抜く三輪車

作者の名誉のために、あえて名前は伏せますが、「春うらら」なんて言うデタラメな季語を使った句が最高得点だなんて、句会のレベルそのものを疑います。

春は「うららか」であり、それに対して「秋うらら」や「冬うらら」と言う季語が生まれたのであって、「春うらら」などと言う造語がまかり通るのは、どこかの地方競馬場くらいです(笑)
「春うらら」と言うのは、「馬に乗馬する」と言っているのと同じで、季語としてだけではなく、日本語としても間違っているのです。
「桜」と言えば、誰が考えたって「春」に決まっています。桜のことを「春桜」などと言う人がいるでしょうか? 「桜」が春を代表する花だからこそ、冬の桜を「冬桜」と呼ぶのです。「風邪」が冬の季語だからこそ、「春の風邪」や「夏風邪」と呼ぶのです。冬に風邪をひいた者が、「冬風邪ひいちゃったよ!」なんて言うでしょうか?

唯一、許されるのは、俳句以外の文芸や歌の歌詞などで、「春のうららかな~」と言ったように、間に「の」と言う助詞を用いて使う場合だけです。この場合は、「春に桜が咲いて~」や「冬に風邪をひいて~」と同じ使い方なので、日本語としても間違ってはいませんし、何も問題はありません。
しかし、「春うらら」と言うのは、「春桜が咲いて~」「冬風邪をひいて~」と同じなのですから、日本語としても間違っているのです。

季語の役目は、季感を表すことだけではありません。もちろん、季感も大切ですが、季語のひとつひとつには大切な本意があり、季感の他にも様々な表情を内蔵しています。ですから、「季感さえあれば季語に制定されていなくても構わない」、などと言っている人がいたとしたら、俳句のハの字も知らないドシロートなのです。

ひとつの言葉が季語として認知されるためには、多くの俳人が何度も議論し合い、何年もかけて、やっと歳時記に掲載されるのです。古くなって現在では使われなくなった季語は外され、そして新しく認知された季語が掲載され、ゆっくりですが確実に、歳時記は時代に沿って一歩一歩進化し続けているのです。
さて、先ほどのとんでもないネット句会とは別に、今度は、ある結社のサイトの添削コーナーを覗いてみました。そうしたら、そこにもありました。

  春うらら着メロの音はビバルディ

この句に対してのコメントが、次のものです。

「面白い句ですが、ねらいが見えているようです。このくらい軽い句もあっても良いと思いますが、詩的な感動は薄いです。」

おいおいおいおい! そんなことはどうでもいいから、デタラメな季語について何とか言ってやれよ! もしかして、添削してる人も、ドシロート?

普通は、まず季語が間違っていることを指摘し、次に「着信メロディ」を「着メロ」と省略してはいけないと指摘し、最後にツキスギを指摘するのが最低ラインの指導です。
そして、そこから先が、添削指導者としての腕とセンスの見せどころなのに、これはあまりにもひどすぎます。小学生の読書感想文だって、もう少しマシなことを書くでしょう。

他にもっと呆れたのが、次の添削です。

  春風や犬曳かせてと異国の少女(こ)

この句に対して、少女を「こ」と読ませるのはあまり良くないから他の言葉を探してみろ、とか、一応それなりのことが数行書いてあって、最後に添削例として、次の2句が書いてありました。

  春風や異国の友と犬曳けば
  犬連れて駆け出す少女春の風

あたしは、この2句目を見た瞬間、次の句を思い出しました。

  薄暑光少女走れり犬連れて 町田澄子

町田澄子の句は、平成12年の作品、この添削は先月(平成16年2月)ですから、完全な類句です。類句うんぬん以前に、元の句の持っていた良さも完全に消滅しているし、こんなものは添削とは呼べません。

さらに呆れ返ったのは、このサイトの添削は、なんと有料だったのです! とんでもないことに、1句につき200円も取っていたのです!

お金まで取っておきながら、オリジナリティーのあった原句の良い部分を削り取った上に、どこにも発表できない類句にしちゃうなんて、あまりにもひどすぎます。その上、この添削をした人のプロフィールを見てみたら、なんと、その結社の同人だったのです。

こんなデタラメな添削で200円も取っていいのなら、あたしの添削は、1句1000円もらったって安いくらいです。
あたしは、ひとりでも多くの人に俳句を好きになって欲しくて、俳句の楽しさを知って欲しくて、少しでも上達して欲しくて、だからすべて無料でやっているのに‥‥。それどころか、掲示板のレンタル料やサイトの運営費など、全部自分ひとりで支払って、それでもがんばって運営してるって言うのに‥‥。

あたしの大好きな俳句をお金儲けに利用して、それでも、きちんとした添削をしてるのならまだ許せますが、こんなデタラメな添削をしているなんて、何も知らずにお金を払って投句している人たちが、あまりにも気の毒です。
もともと、ネットの俳句サイトのひどさは良く分かっていたつもりでしたが、ここまでひどくなっていたとは‥‥。あたしは、怒りを通り越して悲しくなってしまいました。
こんなにひどいアリサマを目の当たりにしたので、あたしのやる気に火がつきました。
あたしは、今年の新年の挨拶の中に、次のように書きました。

「あたしは、俳句が大好きです。この想いも、情熱も、勉強量も、読んでいる俳句の数も、誰にも負けません。」

この想いを新たにし、ネットで唯一の「本物の俳句を実践しているサイト」としてのプライドをかけて、これからもがんばって行こうと思いました。

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