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スレッドNo.36

第二十九話 お~いお茶

※今回の俳話は、2002年の春に書いたエッセイをそのまま転載いたします。

今日、コンビニの飲み物のコーナーに、伊藤園の「お~いお茶」の新茶を見つけた。いつものペットよりも淡いグリーンのボトルに、真っ赤な文字で「新茶」って書いてあった。手にとってみると、「2002年 春一番に摘み採った緑茶です。」と書かれた下に、あたしの大好きな「季節限定」の文字が‥‥。

「新茶」は「走り茶」とも呼ばれ、初夏のころ市場に出回るので、俳句では夏の季語とされている。

限定モノに目が無いあたしは、無意識のうちに買ってしまった。節約しなきゃいけない時なのに‥‥。だけど、買っちゃったんだから、味わうしかない。
「初物は、南を向いて笑いながら食べろ」って言われてるので、あたしは道路地図を開いて、南の方角を調べた。そして、その方向を向きながら、お茶を口に入れた。
だけど、そのまま笑うと、口からお茶がダーッて出ちゃうので、上を向いて笑ってみることにした。

「ガラガラガラガラ‥‥」

 ウガイになってしまった(爆)

「お~いお茶」の缶やペットボトルには、俳句が書いてある。正確には、俳句じゃなくて「新俳句」って言う、季語が無くてもいいものだ。俳句として立派に通用する作品から、思わず笑っちゃうサラリーマン川柳みたいなものまで、色んな作品が採用されている。

毎年一般から募集する「伊藤園の新俳句大賞」は、今年で13回目を迎える。年々応募数が増え、去年は50万だか60万だかの句が集まったらしい。審査委員は、季語無用説を唱える俳壇の大御所、金子兜太(かねことうた)を筆頭に、いとうせいこうなど、十数人の文化人?が担当している。
だけど、1句読むのに10秒だとしても、6句で1分、60万句読むのには、毎日寝ないで24時間読みっぱなしでも、2ヶ月以上かかる計算だ。ホントにちゃんと選んでるのか、怪しいったらありゃしない(笑)

そんなコト言いつつも、1等賞金50万円に目が眩んで、あたしも一度だけ、何年か前に応募したことがある。その時は佳作かなんかで、お~いお茶の詰め合わせと、受賞作をまとめた句集が届いた。その年は、コンビニでお茶を買うたびに、自分の句が書いてある缶を探した思い出がある。

今までの伊藤園新俳句大賞に輝いた作品の中で、あたしの好きな句ベスト3はと言うと‥‥。

  1位 ねるまえにもういちどみるゆきだるま 5才の男の子

※5才の男の子が、初めて作った雪だるま。気になって気になって、何度も見ちゃう。
お布団に入ってからも気になって寝つけず、最後にもう一度だけ、見に行っちゃう。

  2位 天高し猫に生まれて働かず 50代の主婦

※ダンナを支え、子供の世話をして、一生懸命に働いて来た主婦。子供も学校を卒業し、やっとひと息ついたところで、ふと自分の人生を振り返ると、ずっと働きづめだった。気がつくと、もうこんな年齢に。秋のまっ青な空の下、縁側でのびのびと寝ている猫を見ていると、次は猫にでも生まれて来たいなぁ~なんて思っちゃう。

  3位 父の背を越えて十五の春一番 15才の男子

※いよいよ春から高校生だ。中学の三年間は反抗期で、母さんに食ってかかったり、父さんを無視したりと、生意気盛りだった。でも、この三年間で20センチも背が伸び、気がつけば、父さんの背を追い越していた。
あれほど怖かった父さんが、自分より小さく、そして何だか弱々しくなってしまった現実に、反抗していた自分を恥ずかしく思った。その瞬間、春一番が吹き、大人への扉が開いた。

俳句って、ホントに奥が深い。たった17文字の中に、こんなに多くの想いが隠されている。

この3句に共通して言えることは、どの作者も決して背伸びをせず、自分の目線で素直な気持ちを詠っていることだ。

‥‥で、今日買った新茶に話は戻るけど、新茶のボトルには、奨励賞に選ばれた句が書かれていた。

  気がつけばサザエさんより年上に 27才の女性

※もの心ついたころから、家族で見ていたサザエさん。ちっちゃなころは、自分はワカメちゃんやタラちゃんと同じくらいで、カツオでさえ、お兄ちゃんに思えていた。
もちろんサザエさんは、ずっと年上のお姉さんだった。それなのに、マンガのキャラクターは年を取らないけど、作者はどんどん年を取り、ついにサザエさんを追い越してしまった。

‥‥って、サザエさんて、一体何才なの?
とゆーワケで、さっそくあたしはネットでサザエさんの公式プロフィールを調べてみた。
コレがソレだ!(笑)

『フグ田サザエ

年齢…24歳。九州の福岡生まれ。

趣味…読書(特に推理小説が好き)、編み物、料理、ショッピング、スポーツ(テニス、エアロビクス、カツオ達と草野球)

特技…裁縫(自分やワカメの洋服も作る)、モノマネ(特にゴリラのマネがうまい)、カツオを追いかけること。

宝物…婚約時代にマスオからプレゼントされたハンドバッグ
友達…タイコさん、他おしゃべり仲間多数。
性格…明るく朗らかで、竹を割ったような性格。おっちょこちょい。 』

えっ?サザエさんて、24才なの?
‥‥てゆーか、あたしもサザエさんより年上じゃん!
あたしは、複雑な気分で新茶を飲み干した‥‥。

(注)このエッセイを書いた2002年の春の時点では、あたしは20代だったのです(笑)

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