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スレッドNo.2735

手枕(たまくら)の痺れて来たり春隣

百人一首の

  春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそをしけれ 周防内侍(すはうのないし)

は、春の夜の短くはかない夢のようなあなたとの添い寝でつまらない浮名が立つと口惜しいという肘鉄をくらわす、男にとっては実にとほほな歌だが、この手枕が結構重い。座っている状態で額に人差し指を突かれると立てないように、頭はお尻と同じくらい重いので、子どもの添い寝でも結構重く、ましてや大人の頭ではどう寝ても腕が痺れて来るので、あっちを向かせこっちを向かせで、相手が寝たらさっさと手を抜いて退散すると、誰かが言っていた。しかし、

  寝物語好きな女と春を待つ 何某

と子どもと女は昔から寝物語が大好きだから、男たるもの上腕二頭筋(力瘤)と上腕三頭筋を腕立て伏せやダンベル筋トレで鍛えておかなければならないので、腕力のないやさ男には「春の夜の夢ばかりなる手枕」で女子どもを安眠させることは難しい、かも。

>ご褒美のどら焼ひとつ冬日和 兎波
>どら焼を買ひ足すレジや春隣 杜人

どら焼と言えばわたくしの住んでいる杉並区の阿佐ヶ谷の「うさぎや」のアカシア蜂蜜の香るしっとりした皮で包まれた甘みを抑えた餡のどら焼が有名だが皮がばさばさでくどい甘さの文明堂のどら焼など足元にも及ばないどら焼きの逸品で、地元だけでなく遠方からもファンが来るので、お中元やお歳暮の季節になると整備員が出るほど長蛇の列ができる。店が小さい上に開店から人が並ぶのでぽっと行っても売り切れなほど東京で一二を争ううまさだそうで、わたくしはどら焼は好きではないので、隣の「地産マルシェ」という群馬県から泥付きで運ばれる野菜のファンで三日に空けず買い出しに行くが「うさぎや」は一度も入ったことがなかった。ところがどこにも親切な隣人はいるもので行き付けの喫茶店のマスターがこれがそうだとくれたので食べると、確かに甘みを抑えたおいしいどら焼だったが、マスターも言っていたが並ぶほどの味ではない。あとひとつ食べたくなる甘さを抑えたところが味噌かと思ったが、「どら焼と言えばうさぎや」と入手が難しいことと列をなす店に並びたがる日本人の島国根性がブランド化したものだ。

そんなある日、ファッションデザイナーだったが気難しくてヘルパーがいつかない老女の介護を頼まれて通っているうちに気に入られ、終わるとお茶をいれてくれるようになった時にこの「うさぎや」のどら焼が出てひとくち食べて驚いた。皮が実にしっとりとしてもちもちで甘さを抑えた餡と見事な調和だったのである。老女のいれた緑茶も静岡から取り寄せたそこらでは飲めない上物だったこともありどうしてこのどら焼だけ別格なのかといぶかしんだが、実は高齢なので買って来てもそんなに食べられないから冷凍していたのだった。どら焼きを冷凍して自然解凍するとどれでもそうなるというわけではなくこの「うさぎや」のどら焼の皮だけがアカシア蜂蜜がうまくしっとりねっとりした食感に変貌するのだろう。和菓子を冷凍保存など普通は考え付かないから瓢箪から駒の邪道だが、どら焼というといつもこのお婆さんを思い出す。

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