月光やジーン・シモンズ舌長き
句念庵さん、「季節の先取り」とは、たとえば夏の終わりに、ひと足早く秋の「松茸」を食べ、その「走り」の味を詠むことを言います。
また、夏の季語である「蚊」や「扇」が、「立秋」を過ぎて「残る蚊」や「秋扇」となることを「名残り」と言います。
この「走り」と「名残り」は、その名の通り「季節」を跨がなければなりません。
「初秋」に「晩秋」の季語を用いたり、「晩秋」に「初秋」の季語を用いることは、「走り」でも「名残り」でもありません。
連日30℃前後の残暑が続く八月に「行く秋」を詠むのは、十二月のうちに新年の句を詠むような話で、「季節の先取り」とは言えません。
「季節の先取り」とは、ひと足早く「次の季節」を詠むことであり、今が「秋」であれば、「晩秋」に「冬」の気配を詠むことなのです。
今は「初秋」なのですから、「走り」か「名残り」が詠みたいのならば、今詠むべきは「夏の名残り」なのです。