◆ 恋螢 かもめ ◆
白薔薇のめくれて今朝を香りけり
のほほんと生きて螢の夜となりぬ
忘れもの探しに来たの螢川
聴診器あてられてゐる螢の夜
ひとこゑの夜を渡りくる河鹿かな
夕ほたる女医の鎖骨の美しきこと
源氏とも平家とも初螢とも
恋螢愛し激しやうふふふふ
いまここにわたしはゐます恋螢
遠き日へさらはれてゆく螢狩
ひとときを遊べや恋の螢どち
すり抜けて螢の行方不明かな
清らかな螢清らかなる光
川音をはぐれて恋の螢かな
螢火のぽつぽつぽつぽ哀れなり
医師の目の語るなかれと螢籠
草螢意地を張るのはもう飽きて
宵螢ぽつん民家の灯のぽつん
黒南風やおつゆに浮かぶてんてまり
初蝉のまさしく蝉の一声ぞ
日焼した腕にわたしの嫉妬かな
みづすましけふの命をつなぎけり