波多野爽波墨蹟
写真上段色紙右より
骰子の一の目赤し春の山
山吹の黄を挟みゐる障子かな
鶴凍てて花の如きを糞りにけり
赤ん坊の尻持ち上ぐる冬座敷
下段短冊右より
白魚の夕べは溯る畑の梅
櫻貝長き翼の海の星
チューリップ花びら外れかけてをり
ちぎり捨てあり山吹の花と葉と
波音の大王岬の蚊と生れ
夜の湖の暗きを流れ桐一葉
小寒のひらと葉書の来たる見え
炬燵出て歩いてゆけば嵐山
天ぷらの海老の尾赤き冬の空
避寒して刀目利といふ人と
師三人並び現れ寒稽古