猟犬はあるじのベレー帽が好き 爽波
投稿日: 2月 2日(月)08時46分19秒
「あるじが好き」ではなく、「ベレー帽が好き」と言ったことで、とたんにあるじの人となりとか猟犬の甘える仕草が鮮やかに見えてきます。感動を物に託すとはこのことですね。つつましい山の暮らしが感じられて読み手を幸せにしてくれます。
走り梅雨麒麟の首のおよぎくる 爽波
きっこさん、これは「走り梅雨」が実に利いていますね、「梅雨さなか」では暗くびしょ濡れすぎます。
炬燵出て歩いてゆけば嵐山 爽波
「炬燵出て」の一言で作者の状況がわかります。私には寅さんの匂いがしてきます。仕事でいつもの安宿に泊っている。動詞を三つも重ねて、いかにも頼りない感じ。宿の着物の裾がすーすーする感じ。ところが「嵐山」をでーんと置いて座りがよくなり、風景が一気に広がります。着物といえば、
セルの袖煙草の箱の軽さあり 爽波
これもひとめぼれの句です。私は仕事柄着物に接しますがまだセルは見たことがありません。もう年配の方しか知らないのではないでしょうか?さらさらとしたウール地のようですね。先輩の句に<この宮のたそがれが好きセルを着て>があります。