魚島やばりばりひらく宿の傘 爽波
投稿日: 2月 2日(月)15時02分38秒
句集未収録の平成5年前後の作品です。
「魚島(うおじま)」と言うのは複雑な春の季語で、①産卵のために外海の魚が集まって来る内海の場所のこと、②春の豊漁の時期のこと、③豊漁期の鯛の市のこと、と言う3つの意味があります。
ですから読み手は、その句から、この3つのうちのどの意味なのかを読み取らなくてはなりません。
この句は、①の意味です。
海に面した安宿に泊まっていた作者は、小雨の降る中、ちょっと散歩に出かけます。
宿の玄関の傘立てから、1本の透明なビニール傘を拝借して、外へ出たところで開きます。
すると、前に使った時から干していなかったのでしょう。
ビニールが張り付いていて、バリバリバリッと言う音がしました。
目の前には車道、消波塀、そして大海原。
小雨を舞い上げる海風の遠く、海上のひとところに、白いかもめの群れが乱舞しています。
まさしく、魚島です。
白梅やばりばりひらく宿の傘
これでは俳句になりません。
白梅やしづかにひらく宿の傘
これなら一応は俳句になりましたが、掃いて捨てるような月並みな句です。
やはり、「魚島」であり「ばりばり」だからこそ、目の前に景が立ち上がって来て、そして、そこに爽波がいるのです。