はじめまして
投稿日: 2月 6日(金)00時01分40秒
こちらの掲示板でははじめましての齋藤朝比古と申します。
皆さまの爽波鑑賞、素晴らしいですね。爽波は私も大・大好きな俳人なので、ちょっと書き込みさせて下さい。
鳥の巣に鳥が入つてゆくところ
世に何億句発表されているのかは知りませんが、私の最も好きな俳句のひとつです。初見のとき「こんな句なら作れる」と勘違いさせてくれ、二度目に読んだとき「なかなか面白いな」と俳句への興味を深めさせてくれ、三度目に読んだとき「こりゃ凄い」と、私を俳句の深遠なる世界に誘ってくれた、私にとってとても感慨深い俳句なのです。凡なる俳句実作者ならば「鳥の巣へ鳥の入つてゆきにけり」と詠むのでしょうが、爽波の「ゆくところ」という一瞬の切り取り方は、まさに至芸です。
腕時計の手が垂れてをりハンモック
私が毎年ハンモックの句を詠むことになった句です。午睡の心地好さがあますことなく伝わってきます。
いろいろな泳ぎ方してプールにひとり
爽波にしてはかなり心象的な雰囲気を漂わせている句です。自虐ともナルシシズムとも違うなんともいえない孤独感がたまりません。
爽波の句のはまったときの爽快感は他の作者の追随を許さないほどのインパクトがあります。解っていても空振りしてしまう全盛時の江川の快速球のような心地好さです。恐らく多作多捨の捨てた句は恐ろしいほどつまらない句もあったのでしょうが、氏の俳句へのアプローチのストイックさと芸術の域にまで高めた芸は自らの作句姿勢の模範とするところです。所謂俳壇(こういう言い方はあまり好きではありませんが・・・)においては不遇だったようですが、かの三島由紀夫が俳句は爽波に叶わないと、俳句実作から遠ざかったのはさすがに目があると思ってしまいます。