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スレッドNo.59

ソース壜汚れて立てる野分かな 爽波

投稿日: 2月 7日(土)16時26分8秒

第四句集「一筆」におさめられている句です。
汚れているのがビール瓶なら、瓶全体に埃がたかっているような姿を思い浮かべ、潰れてしまったお店や倉庫など、もしくは、路傍のゴミ捨て場などへと景が移って行きます。
そうすると、「野分」とはツキスギの句になってしまいます。

ソース壜の「汚れ」とは、触りたくもないような汚れではなく、注ぎ口のまわりがソースで汚れていると言う、生活感を感じさせるものです。
垂れたソースをそのままにしているのですから、高級なお店ではなく、夫婦で切り盛りしているような、小さな定食屋さんでしょう。
お昼時ともなると、近くの工場の工員さんたちで満員になるような、活気の溢れるお店です。
野分の真只中にあっても、お店の中だけは賑やかで、そのギャップが、ひとつの物語を立ち上げます。

この句の手柄は、一句の真ん中に置かれた「立てる」に尽きます。
「汚れ」と言う、本来はマイナスのイメージを持つ言葉が、そのあとの「立てる」によって、プラスのイメージへと変換され、店内の活気を表現しているのです。
そして、窓の外の「野分」に対しても「立てる」が底流し、「野分かな」としながらも「野分立つ」と言うイメージを導き出し、より一層の強風を表現しているのです。

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