◆ハイヒール句会◆ ☆ 第1回 新春初句会「初雀」☆ ◆きっこ特選☆◆
《きっこ特選5句》
やあやあと吉を引き抜き初雀 あんこ
神社の一角で、わいわいと騒ぎながらおみくじを引く子供たちの姿が見えて来ます。
「やあやあ」と言うオノマトペが秀逸で、どんな表現よりもイメージを喚起させてくれます。
お正月らしい風景に、思わず子供の頃を思い出してしまいました。
初雀キキミミズキン被らばや かへで
「キキミミズキン」とは、昔話でキツネがくれる古ズキンのことで、これを被ると鳥たちの言葉が分かるのです。
実際にはあるはずのないズキンなのに、「被らばや」と言う表現に、思わず周りを探してしまいそうです。
楽しそうにさえずる初雀の声に、キキミミズキンを被りたくなるなんて、とっても素敵な発想ですね。
黒豆の照りを分けあふ三日かな ナナ
本来「おせち料理」とは、一年中休む暇もない主婦が、お正月くらい家事から離れられるようにと考えられたものですが、実際は子供の世話やら何やらで、そうも行かないようです。
揚句は、子供たちも親元を巣立ったあとの、夫婦二人でのお正月でしょうか。
お正月らしい、静かでゆったりとした時の流れを感じます。
初春のエプロンさらりと結びをり 手毬
新年を迎え、初めてお台所に立って包丁を使うことを「包丁始(ほうちょうはじめ)」「俎始(まないたはじめ)」などと呼びますが、お料理をするためには、まずエプロンをします。
新年最初のエプロンをさらりと結んだ作者の姿は、さしずめ「エプロン始」とでも言ったところでしょうか。
爽やかな新春の光が、お台所に溢れているようです。
涙目にふくら雀の円なる 雪音
冬場の雀は、寒さに耐えるために羽毛を膨らませ、首をすくめています。
その姿から「ふくら雀」と呼ばれており、帯の結び方にもなっています。
涙を溜めた目に、もともとまん丸なふくら雀の輪郭がぼやけ、まるでふわふわの雪玉のように映りました。
さっきまで悲しかった気持ちが、なぜだか薄らいで来たように感じます。