MENU

スレッドNo.477

ライブがはねたら

「遊…大丈夫?」
心配そうな俊に頷いて 遊はステージに向かう。
スタジオと中継がつながっているので マイクを再度確認して階段を登る。

「さあ 皆さまお待たせしました‼
七本木ヒルズ クリスマスツリー前から 火鷹遊くんの曲をお届けします。遊くん 今年はアルバムに 全国ライブなどホントに大活躍でしたね〜‼
遊くん 今日歌ってくれる曲の紹介をお願いします‼」

「曲は 今年だしたシングルのメドレーと
あとはクリスマスなので特別にクリスマスソングのカバーを一曲…
これは誰もが耳にしたことのある有名な曲です。」

「では 遊くん スタンバイ お願いします。」

遊は 少し熱っぽい身体を奮い立たせて歌いだす。
喉も少し違和感があり 高音がいつもよりでていないのがわかる。
メドレーを歌い終わった遊は2曲目の 途中でステージ上の階段にふわりと座り込む。
それは演出にみえてそれほど違和感は感じさせなかったが
見守る俊はヒヤリとした。
なんとかラストまで歌い終え 遊の中継は終わる。

「火鷹 大丈夫か。」

先ほどオープニングで夜景をバックに歌い上げたばかりの龍が声をかける。

「志摩さんは?」

「クリスマスだから 矢崎のおっさんの病院に行かせた。
これでも気つかってんだぜ〜。」

「…そうか。」

「?何かあったか?」

「俺 これから番組スタッフの忘年会に呼ばれてて
ちょっと外せないんだよ…毎月一回は遊が必ず出演してる番組だし…
志摩さんがいてくれれば 良かったんだけど…」

「俺が 火鷹を送ってくぜ。」

「…大丈夫か? もし何かかったら…」

「大丈夫 お兄さんにまっかせなさ〜い」

「スピードだすなよ。」


何となくそんなやりとりが聞こえていたが
遊がはっきり意識を取り戻したのは 龍の車の中だった。

タバコの匂いのする龍のコートが掛けられている。
身体の向きを変えると 気がついた龍が声をかける。

「大丈夫か? かなり熱がありそうだから
緊急行っといたほうがいいかもな。
どうする!?」

…病院はまずい…

「ありがと 大丈夫だから…」

「大丈夫って感じではないけどな… 飲むか」

水が差し出される。

「ありがとう…」

一口飲んだ遊がふと気がつく。

「…龍 これ飲みかけだけど…」

「ああ、さっき楽屋にあったやつの残り」

「!!」

「お兄さんの飲みかけだけど ありがたく思え。
風邪には水分だろう」

「………」

熱が一瞬で上がった気がする。

熱のせいなのか 龍のせいなのか

龍が掛けてくれたコートに を握りしめて瞼を臥せる。

遊を気づかってボリュームを下げたラジオから
昔からあるスタンダードなクリスマスソングが聞こえる。

それに合わせ遠慮がちに小さく龍も口ずさむ。
「メリー クリスマス…」

こんなクリスマスもありかも知れない。
そう思って遊は意識を手放した。

引用して返信編集・削除(未編集)

このスレッドに返信

このスレッドへの返信は締め切られています。

ロケットBBS

Page Top