暑中お見舞い申し上げます
万里様、妄想部の皆様。
毎日暑いですがいかがお過ごしでしょうか?
キ●チョーの夏、日本の夏
もとい
妄想の夏、部員の夏
ということでw
勝手に妄想書き逃げ致します〜。
「カバー曲でミュージックビデオを創る?」
「そうだ。ミュージックビデオ先行で発表して、テレビ出演には関与せず、
ライヴや、シングル曲の発売をメインにプロモーションを展開する。つまり…」
矢崎は、吸い込んだ紫煙を吐き出しながら応接テーブルの灰皿へ煙草を押し付けた。
「メディアへの露出は最小限にとどめて、歌だけで勝負してもらう。」
「ビジュアルの先入観をなくした方が、再スタートも切りやすいと思うの。」
珈琲を差し出してくれた亜矢子の言葉から、
今回のプロモーションが『過去バレ』防止策であるニュアンスを感じとる。
「別に構わないけど。誰の曲をカバーすんのさ。」
湯気をたてる珈琲カップに手を伸ばしつつ、遊が投げ掛けた質問にわずかな沈黙が生じた。
「…?」
「それなんだがな…」
ココン、と短いノックのあと
返事も待たずに扉を開いた人物を見て、遊の心臓が跳ねる。
「…よう。」
「ど、どうも。」
最小限の挨拶後、視線が絡んだのはほんの数秒。
「どうした、龍。」
「ああ。明日からツアーの準備に入るんで、矢崎さんから何かあるかと思って。」
『矢崎さん』。
変わらず『矢崎のおっさん』呼ばわりしているのだと思っていた。
「スタッフやサポートメンバーは問題ないんだろう?」
「いつもの面子だし、今のところは。」
「だったら、俺からは何もないよ。お前がしっかり結果を出してくれればね。」
矢崎が穏やかに告げた台詞をきいて、龍は、わずかに口角を上げた。
(時間が経つって、こういうことなんだな。)
軽く一礼して去っていく龍の背中を眺めて、漠然と思った。
「いいの、遊?」
「え?」
気遣わしげな亜矢子の声に我に返る。
「その…久し振りだったんじゃない?龍と。」
「あー、うん。5年ぶり…かな?」
何か言おうとした亜矢子の言葉を遮るように、遊は視線を移した。
「で。誰のカバー曲を歌うの?」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
セントラルレコードの関係者専用エレベーターは、地下駐車場に直結している。
別のエレベーターを利用すれば、一階に降りることも出来るのだが
空港に迎えに来てくれた亜矢子と一緒に専用エレベーターであがってきた遊には、
ビル自体の出入りに必要な入館パスが交付されていなかった。
(とりあえず駐車場に降りて、歩けばタクシー拾えるかな。)
ポン、とエレベーターの扉が開き足を踏み出した先に人影を見つける。
「龍…。」
夜の地下駐車場の薄暗い光でも、間違えようがない。
5年経っても変わらない。いや、むしろ…
(ますます格好良くなってる。)
服装はラフなのに、
大人の男性を意識せずにはいられないその姿に、遊の心臓は再び跳ねた。
「乗れよ。送る。」
返事も聞かずに龍は車へと歩き出した。
「え、あの。あ、うん。」
慌てて後を追う。
(駄目だ、顔が熱くなってきた。)
先程は、一瞬の出来事すぎて、龍と再会した事実だけが心を占めていたが
いまは、龍が傍にいる現実に胸がドキドキしている。
「おい。」
「な、なに?」
「顔、赤いぜ?」
「…っ!」
反論する前に、龍は車に乗り込んでしまった。
(悔しい。)
まるで自分だけが、変わっていないようで。
どんなに年月が経っても、顔を見た途端、簡単に時間が引き戻されてしまう。
「こ、これは東京の夜が暑くて…!」
「冗談だよ。」
「へ?」
「こんな薄暗い場所で見える訳ねーだろ。」
事も無げに言った龍が、車を発進させたことで
遊は殴りかかることをかろうじて堪えた。
「あんた、相変わらず嫌な奴だ。」
「そうか?」
「そうだよ。全然変わってない。」
「…結構、変わったと思うけどな。」
考えを見透かされたようでドキリとする。
同時に、ショックを受けている自分がいた。
(バカみたい。俺は変わってないって、龍の口から聞きたかったんだ…。)
5年前。
日本を去る遊に、龍は約束をした。
『行くよ、俺がニューヨークへ』。
そして、その約束は果たされないまま現在に至る。
龍がニューヨークへ来ることは一度たりともなかったし、
遊が自ら日本へ連絡をとることもなかった。
「セントラルレコードがおさえたホテルに宿泊してるんだよな。」
(今回、矢崎のおっさんが再デビューの打診をくれなかったら…
もう会うこともなかったのかもしれない。)
「少し寄り道するけどいいか?」
(こんな気持ちで、本当に歌えるのかな…)
「おい。聞いてるのか?」
「…えっ?あ、ああ。うん。」
「……どうだ?久々の日本は。」
「どうって言われても。まだ空港とセントラルレコードしか行ってないよ。」
「だな。」
ハンドルを操る横顔が少し笑ったのに、胸が切なく疼く。
「龍は、知ってるの? …カバー曲の話。」
「ん?ああ。お前、決めたのか?」
「正直、迷ってる。」
「ママは偉大か。」
「そんなんじゃないよ。勿論それもあるけど…」
『火野鷹子の名曲から、遊が選ぶといい』。
それが、再デビュー曲の条件だった。
『もし、お前がカバー曲を歌うことで、火野鷹子の当時の件をマスコミが何か嗅ぎ付けても、
亜久津さんは誠意を持って対応するとおっしゃっている』。
矢崎はそう付け加えた。
(母さんの歌。小さい頃に何度も聴いたあの歌…)
「歌うのは難しいと思う。」
「亜久津さんの絡みを気にしてるのか?」
「するよそりゃ。『歌だけで勝負しろ』って言いながら、
結局それって売名目的のスキャンダルで売るってことじゃん。」
「まあ、亜久津さんに隠す気がなけりゃそうなるな。」
「そんな方法でデビューするなんて、そんなの…」
「甘えんなよ。」
今までとは違う龍の冷たい声音に、遊は言葉を切った。
「歌だけで勝負しようにも、聴いて貰わなきゃ何も始まんねーだろ。
ましてやテレビに露出もしないんじゃ、何をきっかけに人はお前の歌を聴くんだ?」
「それは…」
「確かに、セントラルレコードにはプロモーションの力や資金があるさ。
でもな、それだけに頼ってやるんなら、お前『そこそこ売れる歌手』で終わるぞ。
その程度の気持ちで戻ってきたのか?」
「……。」
龍の言っていることは正論だ。
今度こそはと。
その為に、ニューヨークで5年を費やした。
「世間に周知されるには、相応の『惹き』が必要だってこった。」
大人になれよ、と言って龍は車を停車させる。
(だけど、あの歌は。)
フランス語で『宝物』という意味だと知ったのは、母が亡くなってからだ。
歌う彼女の声の響きを今でも覚えている。
時に優しく、時に切なく、
胸の奥にある宝物を慈しむように歌詞を紡いだ。
本当に綺麗な歌声だった。
その宝物が、亜久津のことだったのか
当時、お腹に宿した遊のことだったのか
今となってはわからないけれども。
母の愛に揺るぎがないと歌声が教えてくれた。
(母さんは、何を信じて変わらずにいられたの…?)
ドン!と乱暴に車の窓を叩かれてハッとする。
いつの間にか、車外に出ていた龍が、無造作に助手席のドアを開けた。
「降りろよ。着いたぞ。」
「ここ、ホテルじゃないよ?」
「寄り道するって言ったぞ。やっぱり聞いてなかったんだな。」
ぼんやりと、遊はその場所に降り立った。
「……変わってないね。」
深夜で閑散としているが
その佇まいは、5年前コンサートを行った時とまるで同じだ。
「元々古い建物だからな。」
「なんか、安心する。」
遊は、目を閉じた。
(そう。…桜が舞っていた。まだ少し寒くて、でもすごい熱気で。)
「そういや。桂木。結婚したの知ってるか?」
「俊が?」
急に現実に引き戻されて目を開ける。
「2年前だったかな。子供もいるぜ。」
「そ、そうなんだ。」
「さすがに、矢崎さんと亜矢子さんが結婚したのは知ってるよな?」
「えええ?!」
今度は、開けた目を限界まで見開いた。
「さっき指輪見ただろう。」
「…気付かなかった。いつ?」
「それは1年前。
つか、お前。本当に誰とも連絡とってなかったんだな。」
「うん。」
「俺だけ無視されてんのかって思ってた。」
「え?」
「怒ってんのかなってさ。」
遊の心がかすかにざわつく。
(約束のこと、言ってる…?)
「いや、その。ニューヨークで、必死に勉強してたから…」
ゴニョゴニョと取り繕った言葉は、何処まで龍に届いたかわからない。
(本当は、意地になってた部分もあるけど。)
「お前も、変わった。」
インペリアルホールを見上げたまま、龍が呟いた。
「どこが…?」
「昔は、華奢な美少年で売ってたのにな。
今じゃボーイッシュなネーちゃんにしか見えないぜ。」
「ボーイッシュなネーちゃんって…。」
どう反応するのが正解かわからず遊は、彼の横顔を見つめた。
「5年だもんなぁ。そりゃ変わるわな。」
「じ、自覚はないけど。」
「自覚しろよ。そうやって、みんな変わっていくんだ。俺だってそうさ。」
(5年って月日は、覚えてくれてるんだ。)
「龍が変わったから…ニューヨークに来なかったの?」
「ん?」
「あ、えっと。その…あんな口約束、別に待ってた訳じゃないけど……。」
(ヤバイ。何言ってんだろ。また顔が熱く…からかわれる。)
「ごめん。」
遊の心配をよそに視線を合わせた龍は、真剣な眼差しで告げた。
「俺は、約束を破った。悪かった。」
「だから、別に待ってた訳じゃ…。そ、それに、聞いたよ。
龍が本格的に歌手復帰してからどれだけ忙しいか。だから、そんなに…」
(気持ちが変わったからって。)
「謝らない、でよ…。」
(5年の間に、俊が結婚して亜矢子も結婚して。みんなに変化があるんだ。
龍だって、もう恋人がいるのかもしれない。それだけの時間が…)
力なく遊が俯く。すると、足音がゆっくり近付いた。
「ちゃんと謝りたいんだ。」
見上げると、予想以上に龍の視線が近くて反射的に遊は顔を下げた。
低く、心地のよい声が頭上で言葉を続ける。
間近で聞く声の安心感に、勝手に涙が滲んできた。
(もう期待しちゃいけないのに、やっぱり好きだと思うなんて…。)
こんなにも痛くて切ない存在を、自分は宝物だと思えるのだろうか。
「ニューヨークに行けなかったこと。すまなかった。」
(母さん…。)
「それともうひとつ、嘘もついた。」
「……どんな?」
遊は、覚悟を決めて顔をあげた。
彼が真面目に謝罪してくれている以上、きちんと受け止めなければならない。
だけど…
(泣きそうなの、バレたくない。)
涙はいまにも、瞳から零れ落ちそうだったが
遊は、なんとか頬を伝わせまいと堪えるように目を見開いて龍を見上げた。
「結果、嘘になっちまった。」
遊と視線を絡め、その変化に気付いた龍が一瞬、辛そうに目を細める。
「俺は、待たないぜ…って言ったのにさ。」
「……え…?」
虚をつかれた遊の瞳から、ポロリと涙が零れる。
「待ってた。」
龍の手が、遊の頬に触れた。
さっきまで無造作な動きをしていた同じ手が、そっと涙をぬぐって離れていく。
「お前を待ってた。」
「………相変わらず、ズルい奴。」
バツが悪そうに笑った龍の顔が良く見えない。
(ちゃんと、見たいのに…)
遊の視界を覆った涙の膜が、忘れていたものを見せる。
(ああ。そうだ。)
歌声だけじゃない。
母は、確かに笑っていた。とても綺麗に。幸せそうに。
この気持ちは変わらないと。宝物だと。
揺るぎない愛を持って。
END
むはっ
なんということでしょう。
導かれるように立ち寄ってみたら、妄想の夏フェア(笑)が開催されている!
しかも、ちょうど今日が開催初日!? 花火どーん。
ぺこさん、ありがとう。(≧▽≦)
これで猛暑にも立ち向かえます。
何が衝撃って、俊ってば結婚しちゃってるのねっ。←そこに全部持ってかれた(笑)
今回が5年後設定で、その2年前っていうと23才ん時か。
しかもすでに子持ちとは、さてはお主フライングしたなw
若いイクメンパパはママ友ネットワークでは話題の中心になっていることでしょう。
大人カップルもゴールしたことだし、あとは遊と龍が愛を育んでいくのね。
この後、遊をホテルに送って行って、そのまま帰ちゃうわけないわよね、龍。ぐふふふ…
ぺこさ〜ん♪
おおぉっ!ぺこさんの妄想!お久しぶりだぁぁ〜\(^o^)/
妄想の夏!ありがとうございます。
連日の猛暑にくじけてましたが、一瞬にしてテンションUP (≧∇≦)
シャナさんの言うとうり、この後の二人は一気にラブラブモードへ...ですよね。だって妄想部の龍だもん(笑)
っていうか、俊パパ!←私もそこに持ってかれました(笑)
万里さま、シャナさん!
レスをありがとうございます〜。
お元気そうで何よりです(о´∀`о)
毎日暑くて妄想脳がぐらぐらしていますw
掲示板に貼り逃げしたので
遊&龍のラブラブむふふ…♪までは
流石に自粛しましたが、
きっと皆様が脳内補填して下さると
信じてます(笑)
まさかの、ぺこさんの新作!!
連日のあまりの暑さに妄想すらままならない日々でしたが、
一気にスイッチが入りました!
ありがとうございます☆
5年…ということは、遊は大学に行ったのかしら。めっちゃ頑張ったんだな〜とか、
俊のお相手は!?とか、
この後、龍は紳士なのか? それとも…
とか、脳内暴走中です(≧∇≦)
こりすさん
コメントありがとうございます!
実は、フランス語の歌のタイトル云々は、
こりすさんの薔薇についての書き込みに
感化されたものでした(笑)
確かに、5年あれば遊ちん大学にも
行けちゃいますよね。
さすが妄想部、夢(妄想)が広がりますヽ(*´▽)ノ♪
妄想部のみなみなさま こんにちは♪
きゃーっ\(^^)/ぺこさんの新作が‼
ありがとう ありがとうございます‼
暑さを乗り切れそうな気がしてきました。
俊パパにもかなりの衝撃をうけましたが
一番の驚きは原作終了から5年の月日が…
ってところです‼
5年の間に 龍と遊に何があったんだろうかと
いろいろ妄想してしまいました。
龍はセルフプロデュースできるようになるまで
ニューヨークには行かないとか決めてたんでしょうか?
遊は ますますキレイになって いろんな外人さんに熱−い
アプローチをされたりするんですが やっぱり心の奥に
思ってる人がいるので 踏み出せずにいるのです…
なーんて…
このあとの大人の脳内補填妄想も進行中ですが
ぺこさん!続きが気になります‼
たまおさん
コメントありがとうございます(^-^ゞ
皆さんが皆さんの俊パパへ反応なさったのが
何だか面白かったです(笑)
そうなんですよ〜、益々キレイになった遊ちん
そして、5年寝かせたことで気持ちの自覚を
強くした龍…妄想が止まりません(*≧∀≦*)