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スレッドNo.231

論語でジャーナル’24

 子曰く、政を為(な)すに徳をもってすれば、譬(たと)えば北辰(ほくしん)のそのところにいて、衆星のこれをめぐるがごとし。

 先生が言われた。「政治を行うのに道徳をもととしたら、まるで北極星が天の頂点にじっと座って、すべての星がこれを取り巻きながら動いているように、うまくゆくに違いない」。

※浩→孔子の住んでいた華北は、初夏の短い雨期を除いて、天は隈なく晴れ渡っていて、夜空の星はいつも燦然と輝いていたそうです。孔子は、北極星を中心として美しい全星座が整然と運行しているのを見て感動したのでしょう。権力による政治ではなくて、道徳をもととした政治を行えば、きっと天上の星の世界が持つような荘厳な調和を地上に実現できるに違いないと考えたのでしょう。
 西洋では、カントが、「わが上なる星空と内なる道徳法則」に畏敬の念をいだいて感動しています。この美しい空にミサイルを飛ばす国がありますが、アドラー心理学が考えるように、今の国際情勢を見ても、人類の精神年齢はほんとに10~12歳だと納得できます。日本ではかつて2つの都市で核兵器の被害を実際に経験しているにもかかわらず、アメリカの傘のもとに保護されているという理由で、「核兵器禁止条約」に参加していないです。自国防衛のためには仕方がないのでしょうが、そのアメリカが広島と長崎に原爆を落としたことを忘れてもいいのでしょうか。カントは18世紀末に『永遠(恒久)平和のために』で、国際連盟構想を掲げて、実際に国際連盟ができました。第二次大戦後は国際連合になりましたが、安全保障理事会では必ずといっていいほど、大国が拒否権を行使するので、議案は常に不成立です。今だって、アメリカの提案をロシアと中国が反対し、逆にウクライナへ戦争を仕掛けて実行しているロシアが、安全保障理事会で停戦の議決をしようとするといわば“被告”のロシアが拒否権を発動するため、議案は成立しません。これでは国連はまったく機能していないことになります。国際平和は夢まぼろしというのが現実のようです。
 カントの『永遠平和のために』の概要は……
 国家を1つの人格として捉える。そうすると国家は対外的・対内的利害に動かされる傾向性をもっていると同時に、定言命法により道徳的法則を自分自身に課すような存在だと言うことができる。でも国家は利害意識を放棄しようとしない。だから永遠平和状態に少しずつ近づくことしかできない。だから「常に拡大しつつある国際連合」という考え方のほうが役に立つ。
 「結局、永遠平和状態に到達できないのなら、それを目指す意味なんてあるの?」と思う人もいるかもしれない。しかしそれは考え方として正しくない。なぜなら永遠平和状態がいつか達成されることは、自然の「摂理」が保証しているからだ(具体的にいつ達成されるのかはわからないが)。そのことに心配する暇があるなら、永遠平和状態に少しでも近づけるように努力すべきだ。「まずもって純粋実践理性の国とその正義を求めて努力せよ。そうすれば汝の目的(永遠平和という恵み)はおのずからかなえられるであろう」。
 私が2番目に勤めた学校(高梁工業高校、当時は高梁南高校で今は高梁城南高校)の校訓は「自律友愛」でした。もちろんカントがルーツです。道徳的主体として自律した尊い個人と個人が、深い友愛でつながるという、アドラー心理学の「個人の主体性」と「共同体感覚」を彷彿させる美しいフレーズだと思います。カントの定言命法は今でも暗記しています。
 「汝の意志の格率が常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ」。
 「定言」というのは「仮言」と対の言葉です。その定言とは「無条件」、「仮言」とは「条件つき」という意味です。「条件つき」というのは、「もし~ならば」という条件がついているのですから、例えば「もしあなたが幸福になりたいなら、人には親切にしなさい」となります。定言命法では「人には親切にしなさい」です。どう違いますか?
 道徳的なのは後者です。無条件に善行を行なうという厳しい考えで、“厳格主義”とも言われました。私利私欲まみれの暮らしをしても、こういう美しい行動には憧れます。「この身は地獄の業火に焼かれても、それでも魂は天国に憧れる」と、「金田一少年の事件簿:オペラ座館の殺人」のヒロインが叫んで、飛び降り自さつをするシーンを思い出しました。
 「人格の尊厳」ということが、今日、とても軽視されていると思います。他者の人格を考慮しないばかりか、最近はおのれの人格すら軽視しているような、破廉恥な行動をする人が多くて、嘆かわしいです。アドラー心理学の「共同体感覚」の実践はとても困難な状況です。

引用して返信編集・削除(編集済: 2024年07月31日 07:13)

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