論語でジャーナル’24
子張問う、十世知るべきか。子曰く、殷(いん)は夏(か)の礼に因(よ)る、損益するところを知るべきなり。それ或いは周に継ぐものは、百世と雖(いえど)も知るべきなり。
子張がたずねた。「十代先の王朝のことを予知できるでしょうか」。先生は言われた。「古代の殷王朝は前の夏王朝の制度を受け継いだ。殷王朝の制度のどこを廃止し、どこをつけ加えたか、自分が平素「礼」で教えたところだから、お前はよくわかっているはずである。周王朝は殷王朝の制度を受け継いだ。どこを廃止し、どこをつけ加えたかもお前によくわかっているはずだ。これをもととすると、周王朝を継承する王朝の制度など、百代先まで予知することができるはずではないか」。
※浩→「殷」は現在知られている最古の歴史的王朝です。湯(とう)王が夏(か)王朝を滅ぼして建てて、紀元前11世紀半ばごろ「周」に滅ぼされました。「夏」は伝説的王朝です。
「礼」つまり制度史の専門家である最も若い弟子の一人である子張が、十代先の王朝の制度を予知できるかとたずねました。現代の歴史学では、歴史は連続性を持ちつつ発展すると考えられていますが、紀元前6世紀に生まれた孔子が、「夏~殷~周」の3王朝の礼(制度)の比較から、歴史の連続性と発展性を理解していたことは注目に値します。「お前もよく知っている礼のことだから、わかるはずだろう」と孔子に教えられると、子張は勇気づけられたのではないでしょうか。とかく人に教えるとき、「こんなこともわからないのか」と言われるよりも、こういうふうに「わかるよね」と言われるほうが、もっと学ぼうという意欲が満ちてきますから。野田俊作先生の過去の論文にたびたび「科学性」についての記述が登場します。科学的であるためには、ただ事象を「説明」できているだけでは不十分で、「予測の力」があることが必要だとあります。アドラー心理学は予測の力があります。臨床面でも、現在の行為の「結末の予測」をして、今後の決断を促します。「予測」と「制御」から代替案が出てくるところが何とも魅力的です。
野田先生が作られた「勇気づけの歌」に次のような1節があります(私が覚えやすいように一部を無断で替えています)。
♪この世を動かす3つの法則
自然と社会と論理の法則
このうち自然と社会の法則は
行為の結果で学び取る
今まで経験してないことも
論理の力で予測して
「そうしているとどうなるか」
考えることで協力できる
人間関係正すには
ある日の1つのエピソードから
感情思考行為をもとに
隠れた目標調べよう