温故知新
タダの懐古趣味かもしれませんが、現在閑古鳥状態の岡工教育相談室の様子を知るにつけ、自分としては“黄金時代”かもしれない、退職当時を思い出しました。「朝日新聞岡山支社」から記者さんが取材に見えました。そして次のような記事が「岡山版」に載りました。
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☆ 平成14年2月14日、朝日新聞岡山版から
アドラーの理論生かし生徒指導/大森 浩 教諭
県立岡山工業高校(岡山市北区伊福町)で生徒のカウンセリングを続けてきた大森 浩教諭(60)が今春、定年を迎える。学んだ精神医学者アドラーの理論を生かして、子どもたちを一人前の人として接することを説き、(彼が)主催する教育相談セミナーには、他校の教諭や不登校の子どもを持つ保護者ら校外の人も参加してきた。保護者らの要望で、4月からもセミナーを続けることになり、大森教諭は第2の人生に意欲を見せる。
午前11時40分。「先生、入るよー」。昼休みが始まりしばらくしたころ、生徒たちが次々とやって来る岡山工業高校の教育相談室。生徒たちは漫画を読んだり、囲碁をしたり。45分間の休みを思い思いにくつろぐ。
大森教諭は教育相談の担当となって15年。はじめのころ、心理学の本を読みあさって生徒たちの気持ちを知ろうとしたが、うまく相談に乗れるかどうか不安がつきまとっていた。そんなとき、出会ったのがフロイト、ユングと並ぶアドラーの心理学だった。
「アドラーは、問題行動や症状の除去をカウンセリングの目標にしない。症状は相手を操作する道具で、対人関係が変われば症状はなくなる。不登校や乱暴する子どもたちも一人前の人間として尊敬し、信頼する。その過程で、問題行動や症状は改善する」。大森教諭は目から鱗が落ちた思いだった。
92年に、日本アドラー心理学会認定のカウンセラーに。翌年、相談室内研修会を学校外の人にも開放し、アドラー心理学を学びたい人たちを対象にセミナーを始めた。初回は1人、今は養護教諭や不登校の子どもを持つ保護者ら30~40人が参加するようになった。
授業の合間や放課後には、個別相談にも応じる。同校の生徒だけでなく、生徒の対応に悩む小、中学校の先生、保護者らが県外からも訪れる。大森教諭は「不登校の子どもを(今すぐ)学校に行かせるようにはできない。でも、家族が仲良く暮らせるためのアドバイスはできる。家族が仲良く暮らせるようになると、子どもが、良い環境で自分の人生の選択・決断ができる。これが解決につながる」と話す。
セミナーは毎月第3土曜日午後2時から。今月は「カウンセリングの講義と実際」の題で、性格分析について学ぶ。「続けてほしい」と願う参加者4人が発起人となり、4月以降は同市北区伊島町3丁目の県生涯学習センターに場所を移して続ける。
「もっと心理学に没頭し、勉強できることを楽しみにしているんです。公民館などで育児相談や講演ができないかな」。心は束の間、定年後の生活へ飛んでいった。