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スレッドNo.74

老子でジャーナル

老子第6章
 谷神(こくしん)は死せず。これを玄牝(げんぴん)と謂(い)う。玄牝の門、これを天地の根(こん)と謂う。緜緜(めんめん)として存するが若(ごと)く、これを用いて勤(つか)れず。

 谷間の神霊(デイモン)は永遠不滅。それを玄妙不可思議なメスという。玄妙不可思議なメスの陰門(ほと)は、これぞ天地を産み出す生命の根源。綿(なが)く綿(なが)く太古より存(ながら)えしか。疲れを知らぬその不死身さよ。(←福永光司先生の訳)
 もう少し穏やか訳──は、
 万物を生み出す谷間の凹地に宿る神霊は、とめどなく生み出して死ぬことはない。これを私は「玄牝(神秘なる母性)」と呼ぶ。この玄牝は天地万物を生み出す門である。その存在はぼんやりとはっきりとしないようでありながら、その働きは尽きることはない。

※浩→なんともセクシーな解説です。「谷神」は谷間の凹地に宿る神霊のことで、女性の陰部を表現しています。玄牝(げんぴん)は玄妙な牝(めす)、不可思議な生殖力を持つ女性の意味です。祭りの犠牲に捧げられる黒い牡牛を「玄牡(げんぼ)」と言うそうです。女性が永遠の母であるのに対して、男性は生け贄(いけにえ)で哀しき犠牲者ということになります。はてさて……。そうえば蜂や蟻の世界もトップは女王蜂です。「根」は“男根”“女根”の「根」で性器のことです。性は人間を含む生物一般において最も原本的・本来的な事実で、この上なく自然なもの、作為なきもの、神秘なるものの典型で、それはまた最も良く大地の安定性を象徴しています。農民の質朴で健康な生活と密着しています。玄のまた玄を説いて、都市的な文明生活の生命の衰弱現象を歎いて、田園村落の農耕生活の強靱な野生を賛美しています。ここまで“性”を謳歌すると、心理学ではヴィルヘルム・ライヒのようです。
 ヴィルヘルム・ライヒ(1897~1957年は、オーストリア出身の医学博士、精神分析家、です。フロイトの精神分析を信奉し、それをさらに自我心理学へ発展させました。性格に関する研究では、フロイトの娘さんであるアンナ・フロイトの『自我と防衛のメカニズム』(1936年)を発展させ、人は性的本能と外界に対して自己を防衛するために「性格の鎧」を着ると考え、性格分析を確立したのです。また、心的外傷体験(トラウマ)が身体を鎧のように強ばらせ、浅い呼吸に陥らせることに気付き、「筋肉の鎧」(身体の動きにおける性格の表れ方)という概念を作って、身心相関の考えにもとづいた革新的で実践的な身体心理療法の諸技術の誕生に影響を与えたことで有名です。
 「治療ではなく予防によって神経症と戦いたい」と述べ、精神分析とマルクス主義を調和させようと試みていた若い分析家やフランクフルトの社会学者達の潮流に属していて、「性革命(セックス・レボリューション)」という言葉を生み出しました。アメリカに移住後、生命エネルギーの概念として、「生命体(organism)」と「オーガズム(orgasm)」を組み合わせ「オルゴンエネルギー」という造語を生み出しました。1940年に“オルゴン集積器”というものを作り、ガン患者に効果があると主張しました。アメリカ食品医薬品局は第一級詐欺罪であるとしてライヒを訴えて、オルゴン集積器と関連文献の州内出荷を差し止めを命じます。1956年、差し止め命令を破った侮辱罪で2年の禁固刑を言い渡し、裁判所の命令で6トン以上の彼の出版物が焼却されました。彼は1年後、心不全で刑務所で死亡したそうです。華やかでセクシーな理論を唱えたわりには、末路が地味すぎるように感じます。そういえば、ニーチェも発狂しました。偉大な人の晩年・末路は惨めなことが多いようです。老子の、文明をかたくなに否定する、頑固なまでの純朴な復古主義が、たくましいと言えそうです。オルゴン集積器はまさしく老子が排斥しようとした「文明の利器」にあたるのでしょうか。

引用して返信編集・削除(編集済: 2024年02月26日 07:00)

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