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スレッドNo.80

老子でジャーナル

老子第9章
 持(じ)してこれを盈(み)たすは、その已(や)むるに如(し)かず。揣(う)ちてこれを鋭くすれば、長く保つべからず。金玉(きんぎょく)、堂に満つるも、これを能(よ)く守る莫(な)し。富貴にして驕(おご)れば、自らその咎(とが)を遺(のこ)す。功遂(と)げ身退(しりぞ)くは、天の道なり。

 満水状態を無理に続けようとしても愚の骨頂。鍛えて鋭く尖(とが)らした刃物は長持ちがしない。金銀財宝を座敷いっぱいに積み上げても、とても守りきれはしない。出世して偉そうな顔をすれば災いのもと。仕事をやってのければ、さっさと引退するのが天の道というものだ。

※浩→「持満」「自盈(じえい)」の戒めです。「持(じ)してこれを盈(み)たす」は「盈」と「持」が逆さまだと言われます。古代の文にはこういう“倒語”が多いそうです。ここでは「水を満たす」と訳していますが、「弓を握り十分張り詰めておくこと」とも訳すそうです。(初代)中村錦之助さん主役の映画「宮本武蔵」で、京都一乗寺の決闘の前でしたか、緊張で張り詰めている武蔵に、高名な遊女が手元の琵琶の弦を張り詰めてナタで叩いて見せます。琵琶はあっという間に割れてしまいます。「今のあなたさまはこの琵琶のよう」とたしまめます。岩崎加根子さんという実力は女優さんが熱演されていました。彼女は現在91歳で、俳優座の座長をなさっているそうです。
 弦楽器を演奏する人は、しまうときは必ず弦を緩めておきます。落語の故・桂枝雀師匠も、「笑いは緊張の緩和」とよくおっしゃっていました。「緊張があって緩和がある。若い方は少しの緩和、例えばお箸がこけた(倒れた)ことにも緊張と緩和を感じて、お箸がコットン。『こけたー』とお笑いになります。もっとも、お若い人に限りますね。これが四十、五十、六十にもなりますと、『お箸がこけたー?それがどーしたのー!!!!』と、すごいことになりますね」と。
 福永光司先生の解説では、中国以外の古代民族、例えばソロモンの『箴言(しんげん)集』に「富は永く保つべからず。いかで位は世々に保たん」、「穏やかにおりて争わざるは、人の栄誉(ほまれ)なり」とあるそうです。老子の場合は、位を全面的に否定するというより、それをむしろ「長く保ち」「よく守る」ことに最終的な力点が置かれていて、現実主義・現世主義であるところに違いがあります。つまり「逆説的」な処世です。小川環樹先生は、もっと簡潔まとめられます。要するに、満月が欠けるように、完成と豊満は衰退につながるものだから、長く保持することはできない。身を守るためには、適当な時機を見て身を引くのが最善の処世法だと。私も自分の関わっていることを途中やめにすることがたびたびありました。このことの言い訳になりそうです。私の場合は、自分の短気やわがままから投げ出したと言うほうが正確です。ただ現在の津山でのお仕事は丸6年になりますが、不思議なくらい続いています。K先生のおかげが大きいです。

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