自句自解
9 初糶の金魚木舟を赤く染め 3
最近の新聞で弥冨の金魚の競り市の報道があった。簡素な木箱の中にさまざまな色彩の金魚が
犇めいている。最近の金魚ブームで国際的に市場は広がりランチュウなども高値で取引されている
らしい。弥冨の金魚も最高は一匹一万円で落札されたとのこと。わが家ではメダカが泳いでいる。
36 鐘一つ煩悩一つ除夜の鐘 3
年々紅白も馴染みが薄くなった。中には歌手名なのか題名なのかわからないものもある。楽器と
絶叫でまくしたてられながらやっと字幕で歌の意味を知る体たらく。やがて静かになりほっとして
聴く除夜のの鐘。心に沁みる。一つずつ煩悩が消えることを念じつつ聴き入る。
50 御歳魂孫に授けて年迎ふ 1
「御歳魂」をおとしだまと読んだ古書。昔から武士の世界をはじめ正月に生き様の心構えを子
孫に伝えたらしい。今は金、物に置き換えられ最近ではスマートホンでの受け渡しも。時代の流れ
か賽銭にもその兆しが。デジタル化、多様性の時代への生きざまを我々も問われているようだ。
62 理髪店出る正月の頭かな 3
私は禿頭に近い。ここ半世紀、七三、オールバック、そしていつからかお任せに。孫より所要時
間は短いのに料金は同じ。割に合わないと思うが。新しい年を迎えるに特に準備は無いが、不要不
急には当たらないと兎も角理髪店へ。頭だけは一足早く正月を迎えた。
74 「俺死んだ」にんまり享くる賀状かな 0
「命日は8月15日、あの世の住所は不詳。」とある。現在83歳の脳性小児まひで言語障害のある元
生徒からの賀状である。頭の良いユーモアのセンスのある子だった。唯一暑中見舞いも欠かさなか
った。勿論「了解。俺もすぐ行くから待っててね。」と返信した。