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スレッドNo.1169

アイビーの俳句鑑賞 その1

アイビーの俳句鑑賞 その1
今月は二物取り合わせの句に見るべき句が多かったように思われる。一概に二物取り合わせ言っても、形態に千差万別があるように思う。ごく穏当に季語のイメージがそのまま句の骨格となるケースと季語のイメージと即かず離れずの距離感を保つケース、最後がいわゆる二物衝撃というもので、まるで関係なさそうな二物をぶつけて化学反応させる手法があるが、取り上げた6句はいずれも即かず離れず句と言えよう。

8 所作美しき茶事の七則梅三分 (ウグイスさん)
今回の最高点句。洗練の極みとして確立された茶事の七則と凛と咲く梅、しかも満開に咲かせるのではなく、敢えて三分に留めおいた絶妙の距離感を味わいたい。

22 薄氷や老母は孫の名を憶え (ふうりんさん)
66 薄氷や恋はいまだにオフライン (かをりさん)
何れも薄氷(うすらい)という難しい季語を持ってきた。両句ともこれが得も言われぬ効果を出している。両句とも季語+切れ字「や」で上五を切り、中七、座五を取り合わせているが、二物の間にある種の緊張感が漂っているのと私は感じた。それもこれも薄氷を季語に選択したことによる。

81 水仙や家に嫁ぐといふ覚悟 (ヨシさん)
水仙という植物は決して卑しい花ではないが、さりとて高嶺の花でもない。中七、座五の内容にまことに相応しい。この句の成功は「水仙」を見つけたことにあると言って過言ではないと私は思う。中七、座五が心象であるのに対し、季語の水仙ははっきり目で見えるから、具象と抽象の取り合わせも効果的だ。

87 ポケットにみすゞの詩集クロッカス (菫さん)
金子みすゞは26歳で夭折した詩人。文学的にも家庭的にも不遇で長く忘却されていたが、近年再評価された。
掲句はみすゞの詩集とクロッカスの取り合わせた。クロッカスの愛らしさと平易で親しみやすいみすゞの詩に通じるものがある。花言葉は青春で、夭折の詩人と相通じるものがある。

94 空セ貝手窪に並べ春隣 (ウグイスさん)
空セ貝はうつせがいと読む。虚貝とも表記するが、巻貝などで中身のない貝殻だけになったもの。砂浜で拾った空セ貝を手窪に並べてみる、別に意味のあることではないが、そこはかとなく海の香りがする。もうそこまで春が来ているのを実感する一時だ。

24 懐に子猫入れたる厨事 (玉虫さん)
この句は一物仕立ての句。猫俳句は茶々さんの専売特許かと思ったら玉虫さんからも出てきた。台所仕事をするのに子猫がまつわりついて来る、ままよと懐に入れる。微笑ましい猫馬鹿だ。子猫が春の季語で立派な俳句になった。ただ、「子猫入れたる」が重い感じがするので、「懐に子猫を入れて厨事」 と軽く流してはどうだろう。

92 中一に背丈抜かれし福は内 (ちとせさん)
一緒に暮らしていると子の成長はなかなか気がつかないものだが、特別の行事とか何かの折に並ぶと、つくづく成長したと実感させられる。節分の豆まきの時に一緒に並んでみて改めてその成長の早さに気づく作者。いつの間にか私の背丈を越えているではないか、頼もしく成長したものだとしばし感慨にふけるちとせさん。いきおい豆まきの声にも張りが出ようというものだ。

18 悪態をついて大根くれにけり (無点) 
無点句になったのが信じられないくらい面白い句だ。大根をくれる間柄だからよほど親しい仲だろう。会えば悪態の限りを尽くすのも何時ものことだ。つまり、大根をくれるのも悪態をつくの親愛の表現なのだ。それほどまでに気のおけない二人の間柄が微笑ましい。

(以下次号、不定期掲載)

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