選句候補作品鑑賞
19 悪態をついて大根くれにけり
一読にやりとした。気の置けない隣人どうしの日常とはこんなもの。近年せわし
い日常に追われ近所付き合いも疎遠になった。
特に都会では。子供が少なくなったからだろうか。子ども会も危機に瀕していると
いう。嗚呼、昭和は遠くなりにけり、か。
48 雪解や石炭殻を突き崩す
最近あまり見かけない風景だが良いところに目を付けた。石炭殻を想像する。昭
和の昔まで遡ることに。蒸気機関車に思いが至
った。雪国だろうか。「突き崩す」の座五が心に響く。
85 ぱつと吐く楮打つ手に息白し
こうぞはくわ科の落葉低木で春に淡黄緑色の花や6月頃に実が楽しめるそうだ。
樹皮は和紙の原料になる。この句は和紙を作る過程を詠んだもの。そうと知れば一
読して景色が見えて来る。動きのある臨場感溢れる句だ。
95 針供養小瓶に入れる針と塩
針供養になぜ塩が登場するのか解らないが何か宗教的な意図があるのだろう。し
かも小瓶に入れるという。ここでネット先生に針供養について教えていただいた。
12月8日、2月8日(事八日)にコトのカミ神(年神様、田の神様)に針を豆腐やこ
んにゃく、餅などに挿して寺社などで供養する行事のようだ。塩のことはどこにも
出てなかったからその地域のものだろうか。
※上記4句は無点句だが私なりには次点の句である。どの句にも捨てがたい味があり心惹かれた。
87 ポケットにみすゞの詩集クロッカス (菫さん) 1
「みすゞの詩集」に不案内で採らなかったが座五のクロッカスとの関連で心に残
った句だ。読み直してみて何か懐かしい気持ちに
させられる落ち着いた良い句だと思う。
88 儺やらひや度し難き者それは吾 (てつをさん) 2
≪鬼やらひ己の鬼は追ひきれず≫ の拙句を思い出した。「度し難き者」言い得
て妙。ホントですね。でもほとんどの人はそれに気づかない。先日こんな句を作っ
たが如何かな。 ≪福は内鬼も内とや節分会≫ ある寺社での節分会を見ての作。
94 空セ貝手窪に並べ春隣 (ウグイスさん) 1
良いですねこの句。手窪ですか、なにかほのぼのとしてきますね。
つい、ですます調になりました。