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スレッドNo.1526

アイビーの俳句鑑賞 その4

アイビーの俳句鑑賞 その4

101 啄木忌人を憎みて人恋し (ABCヒロさん)
石川啄木は我が国で最もポピュラーな歌人と言えよう。溢れるほどの詩才を持ちながら、世俗的には不遇の生涯であった。ひとつには天才にありがちな屈折した本人の性格からくる周囲との軋轢だ。酒に遊興に溺れ金銭上の不義理を繰り返したことも。そのことが詩人としての悲劇性を増し、故郷を恋い、人を恋う気持ちが募った一面があるかも知れない。天才歌人の屈折した心情を、「人を憎みて人恋し」とした。

20 永き日や母リハビリのグーチョキパー (ヨシさん)
102 清貧に暮すよろこび花菫 (ヨシさん)
作者のコメントにもあったが、20番の句は夫の母、作者からすれば義母を、102番の句は亡くなった実母を詠んだとのこと。何れも、感情移入を極力抑えた自制的な作句態度に好感。102番の句は説明が無ければ、読み手は作者自身の生き方と捉えてしまう。そうなると「清貧」に違和感があるので一工夫したいところ。両句とも季語の斡旋に作者のセンスが光る。ちょっとほかの季語は思い浮かばないほどだ。

12 釣れずとも磯の卯波を聞くひと日 (ちささん)
60 クローバーに寝転べば雲動き出す (ちささん)
12番の句は7点を集めた。「卯波を聞く」という聴覚に持ってきた辺りが俳句的表現で巧い。同様に60番の句も、雲はずっと動いていた筈なのに、クローバーに寝転んだ途端に動き出したと因果関係をひっくり返したところがまことに巧み。両句とも手練れの句で感じ入った次第。

29 鶯の声を真上に庭仕事 (森野さん)
54 琵琶の音や五臓に染みる春の宵 (森野さん)
29番の句は作者自身の実体験だろう。何とも結構なお住まいで羨ましい限りだ。中七「声を真上に」の楚辞が秀逸で、相当広いお庭があることが分かる。54番の句、実際に琵琶の演奏を間近に聞いた時の、その迫力に感動した。普通、五臓に染みるという表現は、美酒が五臓六腑に染み渡るというように使われる。敢えて「五臓に染みる」という表現をこの句に使ったのは相応の必然性がある筈だ。17文字の中でそこまで表現するのは至難だろうが、実は、読み手の知りたいところでもある。

72 朝寝して孵化する如く伸ばす四肢 (弥生さん)
何といっても「孵化」という詩的感性のほとばしるような表現が素晴らしい。手足を思いっきり伸ばして孵化し、そのまま蝶になって自由に飛び回りたい、とは言ってないが、作者はそんな気分なのだ。春らしい雰囲気の横溢した一句。

39 凍て返る手彫りの女面鬼神面 (無点) 
凍て返ると手彫りの女面鬼神面の取り合わせがよい味を出しているのだが、無点句となってしまった。如何せん、4月句会に早春の句を出したのは損だろう。作戦の誤りとしか言いようが無い。

92 囀りや隣の人のよく笑う (無点)
これも無点となってしまったが、率直に言って、囀りと隣人のよく笑うとでは、つきすぎだろうか。笑ったり喋ったりしては、簡単にネタが割れてしまう。取り合わせの句の場合、季語は適度に離して使いたい。

アイビーの俳句鑑賞 完

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私などしょっちゅうですよ。選句した後になって、どうしてこの句を採らなかったのかと後悔することばかりです。その句にしてみれば、当然入るべき点数が入らなかったことになります。まあ、そういう不条理も含めて「俳句」なのだと割り切っています。

引用して返信編集・削除(編集済: 2023年04月26日 09:34)

29 鶯の声を真上に庭仕事 (森野さん)
なんで、このようないい句を採らなかったのでしょう。
鶯の声をうしろに庭仕事、と私はやってしまいまいますが、真上がいいですよ、春の広がり、三次元的で。

アイビーさんはしなやかなお人柄ですね。
いつも救われてます。
次は暦では初夏ですね。また来月を楽しみに。

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