選句鑑賞
26 桑の実や十五歳まで木に登り (玉虫さん) 5
昔は当たり前、子供の遊び場は山か川、それに海。大府の我が鞍流瀬川も例外なく立ち入り禁止。勿体ない。先日
上流で数人の子供たちがタモを持って川に入っているのを見て何故かほっとした。公園不足の今大自然を教育の場とし
ての活用が望まれる。
この句、「15歳まで」とあるので昔のガキ坊主かお転婆が幼い日への追憶か。いずれにしても桑畑やお蚕さんまでも
想像され楽しく鑑賞させていただいた。
29 蛍火の向うに父の大工小屋 (ヨシさん) 7
作者の解説で下五は実景と知った。知ったとしても鑑賞は変わらないが実景と知ってより句が身近に感じられたこ
とは否めない。父の大工小屋に「蛍火」の季語をあしらったために作者の意図が伝わりより印象が深まった。
34 筒鳥や母の小言のリフレイン (かをりさん) 2
かをりさんの引き出しを見てみたいものだ。まさかこの句も。筒鳥の声は「筒の底を掌でたたくような鳴き声」と
歳時記にあった。姿はかっこうにそっくりとも。「母の小言」との取り合わせを「リフレイン」と表現、何とも心憎
い。
44 ちゃん付けで呼び合ふ老や水見舞 (子燕さん) 5
水見舞いの季語に出会い懐かしく思った。ときしも梅雨の真っ最中、心配な予報も相次ぐ。ちゃん付けで幼なじみ
と読み取れるこの句の二人、水見舞いにかこつけてお互いの老いを労り合っている様子が垣間見える。心引かれる句
だ。
60 空梅雨のダムの湖底の暮らし跡 (森野さん) 6
ダムの建設には必ず賛否両論のせめぎ合いの歴史がある。どうしても犠牲を伴う。そしていつか忘れ去られ満々と
注がれたダムの恩恵のみが世代を超えて受け継がれる。そこへ空梅雨、湖底が露わになった。悲しいかな昔の生活の
痕跡が目の前に。その一時を詠み止めた一句の印象が強烈。やがて満々と湛えられた水の湖底は何事もなかったよう
に忘れ去られていくのだろうか。
80 夏帽子すぐ腹の減る五年生 (ヨシさん) 3
五年生はギャングエイジと言って洋の東西、地域性別を問わずやんちゃ世代。群れるのが特性。好奇心が旺盛、中に
必ずガキ大将がいて集団で突っ走る。ただ、六年生になると落ち着くのが一般的。この句、「腹の減る」の表現で言
い尽くしている。季語も適切。
98 アイリスを短めに切る夫の供花 (いちごさん) 2
アイリスは輸入されたもので種類も多く立弁と垂れ弁が際立って長いのが特徴、と歳時記にあった。作者はこの花
を仏花に選び丈も短く切りそろえ仏前に供えた。この句から夫の人柄も読み取れ来し方の夫婦仲の良さも彷彿とさせ
る。迷わず特選にいただいた。
[ちゃん]の句を評して頂きましてありがとうございます。
中旬の線状降水帯は豊橋~豊川~設楽にかかり、余波は岡崎、西尾、南知多までの範囲で各所に河川の氾濫をひきおこしました。
白桃句友の多い地域ですから、妻があちこちに電話をかけまくって「◯◯ちゃんのところ、水こなかった?」と見舞いしておりましたが、その電話を聞きつつ「にゃ! もう75にも近いのに ◯ちゃん」と言ってるわ と掲句になった次第です。
男というものは案外淡白な生き物ですから、余程のことでもなければ電話をしないけれど、スマホという便利なものがあるので、月末の電話代金のことなんぞは考えもなしにジャンジャンと電話。 一面、女はいいなあ と考えてしまいます。
故郷から遠く離れているため、同級生との交流は途絶え、身近なところの友人は皆んなあの世へ行ってしまった。春日井に昔の恋人も住んでいたけど、10年前に死んでしまった。 2番目の恋人は故郷へ戻って行ってしまった。 今の女房は10番目ぐらいだよ
難聴で友達も出来ないし、今は一人ぼっち ちゃん付けで呼べるような恋人 今からは無理だんべ。 ふふふ
アイビーの俳句鑑賞で取り上げた俳句も割愛した俳句も、幅広く取り上げていただき有難うございます。同じ句でも選者が違えば、また鑑賞も違ってきます。これが正解と言うことが無いのですから、百人百通りの鑑賞があって然るべきです。特定の投稿者ばかりでなく、広く意見交換がされるとよいですね。