選句鑑賞
9 裏切りも不倫もなくて竹夫人 (ABCヒロさん) 8
多くの方の共感を得た。竹夫人を「チクフジン」と読み 「竹などで円筒形に編んだ籠ので寝るときに涼をとるために使用した」と初心のころに教わったが実物は見たことも使用したことも無い。この句を見て一気に戸惑いが吹っ切れた。ネットで写真は見たが今もデパートあたりで売っているだろうか。ひょっとして絶滅季語に指定されているかも。いずれにしても一度は挑戦したい季語だ。このような生々しい句は真似も出来ない。ショックで特選に戴いた。
12 薄れたる日除の屋号何でも屋 (尾花さん) 4
「何でも屋」はよろずやか。 最近街からいわゆる「よろずや」が消えた。子供の駄菓子屋もそうだ。デパートは「変形万事屋」ではあるが。私の村の郵便配達人の仕事は先ず屋号を覚えること。ほとんどの旧家は屋号を持つ。血縁結婚が多く同姓が多いせいかも知れない。この句旧家であろうか屋号の看板が日除けの役を果たしている。思わず郷愁を誘われた。季語は日除け。心惹かれる句だ。
20 病棟を丸ごと射貫き大西日 (蜜豆さん) 8
大きい句だ。季語は大西日。多くの方の共感を得た。「まるごと射貫き」がなんど読んでも胸に迫る。納得の一句だ。
24 姫女苑生き様しかとそこかしこ (ヨヨさん) 1
アイビーさんが掲示板の評で「姫路苑」の特性を詳し伸べてくれている。それを踏まえて読み直すとなるほどと納得できる。「生き様しかとそこかしこ」この個性豊かな花の特性をしかと見定め表現した作者の感性に好感を持った。
31 託したき我が老いの身を水中花 (和談さん) 6
季語の水中花の斡旋に惹かれた。同時に同世代の悲哀を切々と訴える彼の詩魂に胸打たれた。読むほどに身に沁みる句だ。ご同慶の至り。「水中花」を身近にしたくなった。
70 羅を着て闊達な関西弁 (桃さん) 2
私もどちらかと言うと関西系だ。思春期を和歌山で過ごしているのでか夢中になると思わず出てしまう。関西弁は独特だ。第一飾り気が一切ない。「儲かりまっかあ~」「ぼちぼちでんなあ~」。直截だ。生活感がもろに出るのが関西弁。
言葉が端的なだけに目で語る。口でなく表情での語り掛けである。親近感が諸に出る。やはり東京や名古屋とはどこか違う。しかも「羅」を着ているのだ。闊達になるのも自然の摂理。「暑うおまんな~」。
96 掌に濡れて色濃き茄子の紺 (茶々さん) 2
アイビーさんの評にあったが確かに「黒」だ。今、目の前の友人の農地指定地にずらりと茄子が色を揃えている。艶々とした何とも言えない感触。雨の中に光っている。その内やや小粒の「嫁に食わすな」の秋茄子が見られるのが楽しみだ。
ナチーサンさんへ
日除の句、選句してくださりありがとうございました。
10年程前、半田市の運河界隈を吟行していて、何でも屋と描かれ日焼けした日除のお店がありました。珍しいなぁーと思いましたが通り過ぎたので、店内は何があったかわかりません。
数年後、その家は改築され食事の店に変っていました。今思えば「何でも屋」という業務内容をしりたかったなぁーと悔いています。