選句候補作品鑑賞
33 寝んねんよ赤子ほつぺの春日和 (えっちゃんあら さん) 1
穏やかな早春の一コマ。冒頭の子守歌調の措辞、焦点を当てた赤子のほっぺ、座五の締め。云う事なし。
34 開墾の父祖三代や葱育つ (尾花さん) 5
一口に三代と言うが大変なことである。家系図も庶民の場合はせいぜい四、五代で途切れてしまう。これからの世代はどうだろうか。多様化の時代「家」そのものの存在が危うい。そんなことを思いながらこの句を読み返すと作者の先祖への思いの深さが伝わってくる。葱育つがずしんと重い。
40 ありたけの光とらへて耕せり (てつをさん) 9◎弥生、◎ちとせ、◎かをり、◎にゃんこ
心が動いたがこの句次点の句だ。ありたけの光とはなかなか言えない。4人もの特選を得た。対象に向けての一途さが心地良い。
41 峡一人暮らしに雪解水を引く (森野さん) 1
雪解水を生活用水として引いているのだろう。春を待つ気持ち、独り暮らしの孤独が伝わってくる。
46 青空にみどりごの泣く豆の花
青空、みどりご、豆の花が見事に調和して一句をなしている。無点句だが好もしい句だ。素直なところも良い。