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スレッドNo.3338

アイビーの俳句鑑賞 その3

アイビーの俳句鑑賞 その3

恋バナは盛った者勝ち桜餅 (弥生)
昔の恋愛を肴に会話が盛り上がっている。この手の話は尾鰭がついて大袈裟なぐらいが面白い。聞く方も座興と分っているし、傷つく人は誰もいない。その辺の機微を詠んだが、季語の桜餅とあっている。流行語風に「恋バナ」としたが、「恋バナ」が広く定着した言葉なら問題は無いが。未成熟の言葉を安易に使うと、俳句が直ぐに陳腐化するリスクがあるのだが。

故郷は墨絵の世界なごり雪 (ちとせ)
なごり雪だから季節は春、重苦しい陰鬱な空から降ってくる白い雪、色を失ったモノトーンの景色を作者は「墨絵の世界」と表現した。言い得て妙、説得力のある形容だ。ちとせさんの故郷を存じ上げないが、温暖な知多半島に住む私には、ちょっと思いが至らない。音も無く降り続く雪、墨絵のような音のない世界が広がる。風姿のよい句になった。

待ちわびし風をとらえて鶴帰る (森野)
森野さんは、掲句のほかにも引鶴の句を投句されたが、鶴の飛来地として知られる鹿児島県の出水かどこかで、実際に鶴を観察されたのだろう。上五、中七の「待ちわびし風をとらえて」は、実際にその場にいた人でなければ出てこない。観察者の強みだろう。臨場感にあふれ、説得力の一句で、私が特選にいただいた。

半眼の花粉症めく御大仏 (にゃんこ)
大仏にしても仏像にしても目は半眼に開いている。諸仏は瞑想に耽るため半眼にしているのだが、なんと花粉症と結び付けた。そう言われればそう見えなくもないから不思議だ。意外性となるほど感。身辺の誰も気づかないところでアイデアが閃く。それには常にアンテナを張りめぐらせていなければならない。大いに見習いたいものだ。

研修のベトナム人や麦青む (ヨシ)
コンビニや製造工場、最近は病院や介護施設などでも外国人の労働者をよく見かける。掲句の場合はベトナム人だが、一概にベトナムの人はひたむきでやる気があるという評価が定着している。かつての日本人がそうであったように。発展途上のベトナムの心意気に麦青むが適っている。

天命を生き抜く覚悟蜷の道 (てつを)
蜷は川に棲む細長い巻貝で、川底を移動する時に筋がつく。それを蜷の道と言い、俳句の句材によくされる。上五、中七の「天命を生き抜く覚悟」は勿論、蜷のことではなく作者自身の人生観を言っているのは明らかだ。「蜷の道」は「道」というワードが入るので、人の生き方に重ねて、掲句のように比喩的に使われる場合が多い。

電車バス乗り継いで行く大試験 (無点)
この時期、受験生は大変だ。掲句は惜しくも無点になったが、その辺りの受験生の苦労を、移動手段にスポットを当てた。その通りだが、電車とバスを乗り継ぐのは当たり前といえば当たり前で、読み手にはいま一つピンと来なかったのではなかろうか。別の観点から、例えば受験生の一寸したルーテインとか、お守りとかを描写すればよかったかも。

以下次号、不定期掲載。

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恋すてふひよいと咥える桜餅  かをり

アイビーさんの鑑賞いいですねえ。
恋バナは俳句ではあれですけど、弥生さんが女子なら、こんな感じではないでしょうか。
渋いお茶と捨てたものの話など。

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アイビーさん
鑑賞ありがとうございます。
今年は花粉症で2月の半ばごろから目がしょぼしょぼしていました。
ずっと外におられる方は大変だと思います。

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