アイビーの俳句鑑賞 その2
アイビーの俳句鑑賞 その2
庭に出で苛立ち鎮め合歓の花 (ヨヨ)
何かの理由で苛立つことがあったのだろう。見事に咲いた合歓の花に何時しか苛立ちも消えた。心の内面の苛立ちに、目に見える合歓の花を持ってきたのは俳句の手法の理にかなっている。ただ、上五の「庭に出で」は無くても意味が通る。17文字しかない俳句、省略できるものは省略したい。
O型の血は甘いらし蚊の来襲 (ヨシ)
血液型に性格判断は、専門家によれば根拠がないそうである。しかし、日常会話で「彼はA型だから几帳面」などと普通に出てくる。「さっきから蚊に喰われるのはわたしばかり」とぼやく作者。よほど「O型の血は甘いのかしら」と,更なるぼやきが聞こえるようだ。
炎天の大工の声と土埃 (エミ)
炎天下、建築現場に働く職人は大変だ。汗にまみれ土埃にまみれながらの作業である。作者はそんな重労働に明け暮れる大工、その他の職人に対し、労わりと敬意をこめて詠んだに違いない。上五は「炎天や」と切ってみたらどうだろう。きっと別の景色が見えるような気がするのだが。
父のため鯵の小骨を抜いておく (ふうりん)
季語は鯵。年中出ている魚だが夏の季語とされる。作者が年老いた父親のために、鰺の小骨を抜いておいてやる、という美しい情景が目に浮かぶ。ヒューマンなあとあじのよい句になった。事実とは違うかも知れないが、私の俳句解釈としてはそうなる。俳句は一たび発表されたら解釈は読み手に委ねられる。
ひとまずはカツカレー食って暑気払い (ラガーシャツ)
色々やらねばならぬことは多いが、その前に先ずは腹ごしらえだ。そんな状況が思い浮かぶ。なんといっても食べたのがカツカレーというのがよい。これがほかの、例えば刺身定食では気分が出ない。冷奴でもいけない。あくまでカツカレーでなくてはならない。暑気払いとカツカレーの相性がよいとは初めて知った。
取り出して編みかけしもの梅雨来たる (無点)
惜しくも無点となったが、なかなかに雰囲気を持った句だと思う。連日の雨、することがないから、編みかけてそのままになっていた編み物を引っ張り出してきた。季重なりは、この句の場合は気にならない。むしろ座五の「梅雨来たる」より「梅雨長し」あたりを考えたい。
以下次号に続く、不定期掲載。