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スレッドNo.397

アイビーの感想 その2

アイビーの感想 その2

大楠の踊り狂ゐし野分かな (丹治さん)
樹齢数百年の大楠ともなると台風くらいではビクともしない。根や幹はビクともしないが、枝や葉は千切れんばかりに揺れ動く。その様子を「踊り狂ゐし」と表現したところがユニークだ。このくらいの大袈裟な表現も俳句にはアリだろう。

名月を称ふ城址の陣太鼓 (森野さん)
この句以外にも森野さんの城址をテーマにした句が複数あったが、どちらに旅行されたのだろうか。中でも5点を集めた当該句は月の出に合わせて陣太鼓の演奏の様を詠んだ。勇壮な陣太鼓の演奏、城址という舞台装置と相まって月見の宴はいやが上にも盛り上がる。その気持ちの高ぶりをうまく表現した。

蜻蛉やあの日に君は朝鮮へ (てつをさん)
私は蜻蛉と書いて「かげろふ」と読みたい。朝鮮は朝鮮半島全体の地域呼称とも取れるが、私は北朝鮮のことと解釈したい。さすればこの句、てつをさんと朝鮮に渡った君とはどういう関係なのか、色んな想像が掻き立てられる。一つの俳句で読み手の側があれこれストーリーを想像する、これも俳句の楽しみ方ではなかろうか。

隠密の旅かもしれぬ虫時雨 (萩さん)
隠密の旅かもしれぬとは何ともユニークで意表をつかれた。隠密とは時代劇に出てくる公儀隠密なのだろうか、あるいは私的な旅行の意味であろうか。私としては公儀隠密説を取りたい。そのくらいインパクトのあるフレーズと思う。こういうフレーズがいとも簡単に出てくる萩さんの頭脳の若さに脱帽。

国境など小さなことよ天の川 (ふうりんさん)
9月句会のトップの句。夜空の雄渾な天体ショーを眺めていると、人間世界が小さく、つまらなく思えてくる。仮初の国境があり、今も紛争が絶えない人間社会はなんと度し難いことか。そんな感懐を上手くまとめた佳句。ロシアの大統領にも教えてやりたいものだ。

掘るやうに担ぐがやうに踊りけり (ふうりんさん)
盆踊りには色々の振り付けがあるが、スコップで土を掘るような所作がたしかにある。また何かを担ぎ上げるような所作もある。実際には何かの仕草を舞踊的に現したのであろうが、ふうりんさんは即物的に、しかもユークに見立てた。この句もふうりんさんの高点句だが、類想句になりにくい点でこの句の方を取りたい。

病室の母といっしょに眺む月 (無点句)
病気療養中のお母さんであろうか。素直に詠んで好感が持てるのだが無点句になったのは残念。細かいことを言えば「いっしょに」という文言は省きたい。病室の母と眺むるけふの月

霧沸きて山肌蒼く絵画めく (ちとせさん)
渓谷の宿であろうか。折しも霧が出てきた。山の天気はみるみる変わる。山肌の色を蒼と言い留めたあたりが年期だろう。刻々と変わる山の表情を過不足無く描写した。写生句の本領を見る思いだ。

虫の音や旧家に今も釣瓶井戸 (束束子さん)
いわゆる風姿のよい句。旧家といっても色々あるが、所謂、名主・庄屋クラスになると肥料問屋、醸造・酒つくり,木綿問屋など手広く商い、それなりの格式の屋敷を構える。井戸なども二つ三つとあり、中には飾井戸と称して実用でない井戸を庭に配したりする。この句は釣瓶井戸だから、今も使おうと思えば使える。物陰から虫の音も。きっと歴代の当主も俳句をひねる教養人だったのであろうか。

以下、不定期掲載

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