アイビーの感想 その3
アイビーの感想 その3
82 怖いもの知らずの若さ青檸檬 (ヨシさん)
作者の身近にいる若者であろうか、若さが眩しい。怖いもの知らずの若さに、過去の時分を懐かしむ作者。青檸檬と若者との取り合わせが効果的だ。欲を言えばどういうところが怖いもの知らずなのか、具体的、即物的に表現出来ればもっと良かった。
84 秋晴や影踏み鬼の入れ替はる (束束子さん)
雲一つ無い秋晴れの下、子どもたちが影踏みに興じている。身体をタッチするのでなく鬼に影を踏まれたら、そこから今度は自分が鬼となるのがルール。頻繁に鬼が変わる。思わず見入る作者。束の間のように感じたのが、随分長いことそれを見ていた自分に気づく。日々是好日。
86 秋祭り頭上で舞うや梯子獅子 (淑子さん)
獅子が梯子に乗り高い所で舞う。初めて見たのでもないのに、何度見てもハラハラさせられる妙技だ。頭上で舞うとしたところが俳句的な表現でよかった。ただ技術的に言えば、上五の「秋祭り」で軽い切れがあるので、中七では切れ字の「や」を使わずに「頭上で踊る」と続けてみたい。
91 冷まじや境内に置く加農砲 (萩さん)
加農は大砲のキャノンの当て読みで、加農だけだと大砲のことだと分り難いので加農砲とした。いずれにせよ境内に設置されているのだから、戊辰戦争か日露戦争で使用され、お役御免になった大砲なのだろう。しかし年代物とはいえ、砲台もついて重厚な威圧感は圧巻の迫力だ。戦場で威力を発揮した往時を偲ぶ作者、上五の冷まじやに実感がこもる。
93 梯子獅子鎮守どよめく秋祭 (和談さん)
91番の句と同じ情景を詠んだものか。梯子獅子の妙技が見せ場に来ると見物の群集がどっとどよめく様子が臨場感たっぷりに伝わってくる。鎮守がどよめくと擬人化した。擬人化の手法は難しく、下手をすると俳句が浮き上がってしまうが、この句の擬人化は適切だ。上五の梯子獅子は字余りになっても「梯子獅子に」としたい。
アイビーの感想 完