選句候補作品鑑賞
9 若葉風けふもご機嫌古農機 (てつを) 5
農家の生活の一コマ。農機具に愛情が注がれている。中七の措辞が何とも言えない。擬人法を上手く取り入れている。季語を得て一句が輝いた。
10 解体をぢつと待つ家夕薄暑 (ヨシ)
築何年だろうか。昔の田舎の家は概して丈夫だ。我が家もそうだが築80年過ぎても人を住まわせている。人が住んでいるから持っているとも言えるのだが。この句解体が決まり過去が詰まった家を眺めながら追憶に浸っている作者。季語が切ない。
14 草引くや屈む背中に青時雨 (ヨヨ) 2
中七が全て。この中に性別、年齢等が潜んでいる。青時雨の季語が一句を引き締めている。
67 尺取りや老の脳味噌掻き回す (玉虫) 1
中七下五は思い切った表現だ。ここに至った経緯は語られていないが季語の尺取虫からいろいろ想像できる。老いの胸中は他人の忖度を許さない。尺取りに訊くしかない。
69 推敲の末は昼寝の大鼾 (水尾) 6
推敲に推敲を重ねたのだろう。大鼾からきっと満足を得られたのだろう。いい夢を見ているかも。
86 蛇口からじゃかじゃか水が立夏かな (ちとせ) 1
中七がユーモアたっぷり。じゃかじゃかは擬音ともとれるが作者の心の動きだろう。
87 夏旅や卓球台は洒落た黒 (コビトカバ) 1
昔から家族で卓球に親しんだ我が家、私にとって卓球台は特別な存在だ。黄色のピンポン玉の出現に驚いた記憶がある。台も折り畳み式になり扱いやすくなった。ただ台の黒色と外枠の白は変わらない。旅先で卓球に興じている家族。作者のこだわりはここでも卓球台、洒落た黒とは言いえて妙。言われてみると確かに、納得。
90 緑蔭や洪鐘(おおがね)までのをとこ坂 (尾花) 3
洪鐘(おおがね)の所在は関知しないが恐らく古刹の鐘だろう。ミソは下七のをとこ坂だ。少なくとも平坦なはずがない。老境の身には試練だ。目的に向かっての挑戦が続く。緑蔭が雰囲気を和らげてくれる。なお、をとこ坂と「を」を使ったのは旧仮名遣いに徹したからか。
82 いきさつを聞かむ古茶の葉開きけり (にゃんこ) 6
選句鑑賞に抜けてしまいました。古茶が夏の季語とは知りませんでした。この季語が「いきさつを聞かむ」の日常生活に関わりを持った時詩が生まれました。上五、中七の絶妙な措辞と座五の受け止め、人間関係を自然な形でさらりと表現した佳句と思います。
48 梅雨入りやダメライフなもレットイットビー
この句無点句ですが中七、下五の意味が皆目わかりません。多分外国語と思われますが作者のコメントを頂ければ幸いです。