無点句鑑賞
今回の無点句は28句、約30%。中にはこれはと言う句も有るので鑑賞してみたい。
2 蟹の爪一つ転がる秋の浜
この句入選候補の句である。蟹は普通大きな爪を2つ持つ。そのうちの一つが白砂の上に赤くある。作者はそこに目をとめた。胴体は無いので自然の摂理に従った蟹だろう。寂寥とした秋の浜。そこに身を置いている作者の胸に去来するのは。
5 変わり種があるか朝顔実を取りぬ
恐らく作者は植物に詳しく常に変種を求めているのか。この世界も突然変異で進化を遂げてきたと聞く。今は人の手での品種改良の時代。勿論我々はその恩恵を受けているのだが。偶には自然界での営みを垣間見たいものだ。作者のように。
12 絵画如風に描かれいる稲穂
一読面白いと思った。風に描かれている稲穂、しかも絵画風に。風と稲穂を主と従と捉えるとはたしてどちらがどちらか。これは阿吽の呼吸として捉えるしかないだろう。不思議な世界だ。選で迷った句だ。
42 朝寒や今朝は小走り修道女
この句も無点句とは惜しい。普段の修道女の姿をユニークに詠んでいる。作者にとっては新しい発見だろう。やはり朝寒の上5が効いている。修道女は・・・私は老女と取りたい。
67 敗荷の城堀に立つ夕間暮れ
一枚の絵画のような整った句だ。城堀に立つのは作者だろうか。しかも時が時。束の間のこの一瞬を言い止めた。佳作と思う。
73 田の色をあれこれといふ散歩かな
農家の主婦どうしだろうか。今年の作柄を話し合っているのだろう。品種によって稲穂の色は違うのだろうか。そばで聞き耳を立てたいものだ。いずれにしても豊作の気配がする。会話から。
75 晩酌は考の楽しみ衣被
衣被はサトイモの子を皮ごと茹でたもの、作者もご相伴したのだろうか。独り晩酌しながら考を偲んでいるのだろう。秋の夜は長い。しみじみとした作。
77 瓢箪から駒のごとくに烏瓜
「瓢箪から駒」と烏瓜。解釈に悩んだ。思わぬところから烏瓜が顔を出したのだろうか。一期一会の得難い風景。驚きと喜びを感じ取り深入りしないことに。
無点句の、2蟹の爪の句、67敗荷の句は、萩です。反省とともに背景を少し・・・!
2蟹の爪の句 この秋砂浜を散策中のこと、ナチーサンさんの指摘通り「赤い爪」だったんです。もしかしたら食卓に上がった爪かな・・・?と。そこに蟹の心は読み取れませんでした。 数年前「蟹の爪一つ無くした秋の浜」という句を詠んだのですが、その時は砂浜に穴を掘って追われると潜り込む小さい蟹だったのですが、片方爪の無い蟹を見つけ「あー、カニサンにもいろいろあるんだなぁー、ガンバレ・・・!」と思ったものでした。無くしても又脱皮すると信じていますから。
67敗荷の句 弘前城の城庭から堀を見下ろすと堀一面に敗荷が見えた。うす暗くなりかけた頃、色を無くした蓮が立っていたり折れ曲がっていたり、暫く佇んでいるとそれらが戦に敗れ途方にくれた敗残兵に見えてきた。青森の秋は寂しい。ましてお寺参りを兼ねた観光とあっては。 私にとっては強く心に残っている風景ですが一人よがりになっていますね。反省です。