選句鑑賞
16 一葉落つ母の豊かなふくらはぎ (かをり) 1
私のみの選。かをりさんでしたか。上五の季語と下五のふくらはぎの関係に悩みましたが一見離れ過ぎのようで母の豊かなを得て何とも言えない微妙な関係に思えてきました。かをりさんの魔術に惑わされたのかも。付け句がありそうですね。
25 流れ雲満月放つ虹の環(かん) (ダイアナ) 2
下五、環という固い言葉を使っていますがこの場合気になりませんでした。中七から昔の句友に「兎月」改め「吐月」を推薦したことを思い出しました。推薦が少なかったのは上五と虹の関連に原因があるのでは。それとも下五に違和感があったのかも。
31 弓張月ラップの端の消えにけり (コビトカバ) 1
ラップの扱いに何度悩まされたことか。端が一度消えてしまうと透明なラップの端ははなかなか見つからず匙を投げたくなります。弓張り月は弓型の上弦または下弦の月、此処への発想の豊かさに虚を突かれました。脱帽です。
42 ifといふ別の人生鰯雲 (アイビー) 11 ◎ダイア、◎にゃん
正直なところ横文字は余り馴染みませんがこの場合「もしも」と付けたらどうなるか。勝負事でも「たら」、「れば」は付きものですがきっと別の現象がおこるでしょう。それにしても下五の季語が心憎いですね。
61 包帯のはらりとほどけ剥く林檎 (かをり) 3 ◎ナチー、
またまたかおりさんの句を特選に。てっきり女性の句と思っていました。「身近な句材を素直な言葉で表現する」「季語は内容を活かすもので付き過ぎない」モットーにしている私の手本のような句に出会い特選に戴きました。上五に対する季語林檎の斡旋は絶妙と思いました。
69 ウエストン碑美男蔓の真つ赤な実 (尾花) 1
ウエストンは日本を愛し特に上高地を愛した異邦人の登山家で穂高に碑があるようです。130年にわたり近代登山の父として讃えられているとか。この句ウエストンを讃えるとともに中七下五でさらに印象を深めています。写真で見るとなかなかの美男子ですね。
それにしても尾花さん、今回は梓川など穂高の句を詠まれました。再訪とか。他の句もぜひ!
91 僧の手にゼンリンの地図秋彼岸 (アイビー) 6
中七に意表を突かれました。しかも僧の手と。彼岸の法要での一コマでしょうか。ITの時代僧たるものも時代の流れに遅れることは許されません。それにしても僧の手にお経本ならぬゼンリン地図とは。脱帽です。
107 秋うらら縮緬皺の神戸港 (北条) 2
一読縮緬皺に目が行きました。しかも神戸港。縮緬は絹織物で生糸を横糸に使い縮ませた布のことで縮緬雑魚を思いつきます。
いづれにしても神戸港は開かれた商業の港で多くの船舶が犇めいているものと思われます。その光景を俯瞰した作者、時しも秋。
麗かな雲、海鳥も縮緬皺の港をのんびり眺めていることでしょう。楽しい句ですね。
ナチーさん、二句もそして特選も採っていただいてありがとうございます。
おかげさまで8月に続いて出句5句にすべて点が入りました。
変な前衛にならない程度に、季語と離した句は好きなのです。
あと、私は。女です。しばらく出句、感想も休みます。
九9のと金の忘れ薄紅葉
ナチーさん
ウエストン碑美男蔓の真っ赤な実
この句の鑑賞をありがとうございました。 ウエストン碑のことを詠みたいと思った時季語をアレコレ考えました。 美男蔓の赤い実は食べたら甘そうな(食べられません)綺麗な実で好きでしたので季語にしてみたのですが……! 選句して下さってとても嬉しかったです。ありがとうございました。
弓張月の句を選んで頂きありがとうございます!
ラップの端が一度消えたらなかなか出て来ない事と弓張月の頼りない感じ…私の中でぴったりでした。
感じて頂けて嬉しいです。