清記
1 ☆ 明易し夢の続きは又今夜
2 ☆ 鯵大漁釣果の報にうそ少し
3 ☆ 油虫探し求めて朝が来る
4 ☆ ドアフォンの上に雨待つ雨蛙
5 ☆ 行かないで心地よき風五月尽
6 ☆ 初孫の六月賞与初傲り
7 ☆ 裏富士の雲ほどけたり桜桃忌
8 ☆ えいやあと五句を投ぜり心太
9 ☆ お局の小言も交わす若葉風
10 ☆ 鬼平になつたつもりの鮎の飯
11 ☆ 降りぐせの梅雨空罵りペダル踏む
12 ☆ カーテンの向こうに聞こゆ四十雀
13 ☆ 燕子花あやめ菖蒲か紺光る
14 ☆ 各駅の車窓に見つけ花柘榴
15 ☆ かはたれの雲の澱みて栗の花
16 ☆ 蚊遣香先を知りたし栞ぬく
17 ☆ 歓声はきっと缶蹴り夏木立
18 ☆ 黄菖蒲の八重咲き揃ひ踊りかな
19 ☆ 貴婦人の頃が懐かしバナナかな
20 ☆ 酷暑かな歳時記忘れた自然界
21 ☆ 子育てらし威し鳴きすや夏烏
22 ☆ 子燕の口犇めいて餌を求め
23 ☆ 子らの言ふじじ反抗期冷奴
24 ☆ 彩雲の流れて初夏の十四夜
25 ☆ 忍冬咲いて愁眉を開きけり
26 ☆ 召集の命下りしかウリハムシ
27 ☆ 焼酎瓶買物篭に鎮座して
28 ☆ 樟脳の匂ふ押入れ衣更
29 ☆ 初夏晴れに熊鈴の鳴る遊歩道
30 ☆ 白壁に青田広がる散居村
31 ☆ 白南風や部下のデートを目撃す
32 ☆ 新じゃがを束子で擦るつるり膚
33 ☆ 新茶入れ朱泥急須の淡緑
34 ☆ 素麺や喉ごしも良しその細さ
35 ☆ そぼつ降る泰山木の咲く寺苑
36 ☆ ダービーを取つて競馬の二連勝
37 ☆ 立ち漕ぎの生徒眩しや更衣
38 ☆ 頼りたき身内は遠く梅雨間近か
39 ☆ 父の日に黒いクレヨン画の眼鏡
40 ☆ 父の日や空白の文字のみ占めて
41 ☆ 夫剪定羽抜鶏ごと羅漢槙
42 ☆ 梅雨曇ますます重き貨車の列
43 ☆ 梅雨間近繙いてゐる闘病記
44 ☆ 手鏡に映る水無月風過ぐる
45 ☆ でで虫のオブジェの上の蝸牛
46 ☆ でで虫を見らば口つくあの唱歌
47 ☆ てふてふに蕾のあらば柿の花
48 ☆ 天国と思へる一歩冷房車
49 ☆ 剥く手間も美味しさのうち夏蜜柑
50 ☆ 搭乗の手続はスマホかたつむり
51 ☆ 登山帽ウェストン碑より動き出し
52 ☆ 樋伝ふ雫を染めて柿若葉
53 ☆ 夏風にだるだるせざるを得ない吾
54 ☆ 夏蝶の色深まりて海賊旗
55 ☆ 夏場所や土俵が命藤凌駕
56 ☆ 夏野菜紫小かぶカリカリと
57 ☆ 何にでも神宿りてか花は葉に
58 ☆ なみなみと注ぐ地酒や江戸切子
59 ☆ 俳句本開いたまんま明易し
60 ☆ バイク見て柴犬吠ゆる夕薄暑
61 ☆ 博学なシニアガイドや街薄暑
62 ☆ 初夏の藤無料ガイドの五稜郭
63 ☆ 薔薇切るや呼ばれし気して振り向かず
64 ☆ 昼下りエアコン洗い野球観る
65 ☆ 壜に香を詰めて帰らむ花蜜柑
66 ☆ プードルがよく似合う場所薔薇の園
67 ☆ 深くまで木曽駒は碧夏の風
68 ☆ 襖戸の何やら重き梅雨入かな
69 ☆ 故里の四方の山々新樹光
70 ☆ 細麺を食べて至福の涼夜かな
71 ☆ またまたか横綱不在五月場所
72 ☆ 待つといふ揺るがぬ知略蟻地獄
73 ☆ 水無月や碁石をあらふ父の息
74 ☆ 満ち足りて留守居の夫に買ふ鰻
75 ☆ 耳遠き夫に老鶯届く今朝
76 ☆ 耳鳴のしては止まらぬ走り梅雨
77 ☆ ジメジメもめげぬ六月の花嫁は
78 ☆ 山開き誰となく詠む俳句かな
79 ☆ 柔らかに万緑生みし大地かな
80 ☆ 湯上りのあやめ紺染め浴衣かな
81 ☆ 夕闇に皐月のあかり庭照らす
82 ☆ 幽霊海月毎日同じ事をして
83 ☆ よく見れば愛しき花よどくだみは
84 ☆ 捩花や断ちきりたきは負の連鎖
85 ☆ リズムごとつかず離れず夫婦生く
86 ☆ 老鶯をしかと聞きたる木立かな
87 ☆ 若葉風入れ墨の香の流れけり
88 ☆ わんぱくの怖くて好きな蜥蜴かな
89 ☆ 山滴る惚けないことは惚れること
90 ☆ 数独を競ふ夫婦や走り梅雨
91 ☆ 洞爺湖を見下ろすホテル五月晴