おしゃべりや雑談が苦手
Q0353
今日の講演「相談する」の第一レベル「おしゃべりをする」「雑談する」のことですが、私は小さいときからおとなしすぎていろいろあって、おしゃべりや雑談がなかなかできなくて友人を作れず、仲間に入れず、いつでもどこでも孤立してしまいます。おしゃべりや雑談ができるにはどうしたらいいでしょうか、とても悩んでいます。
A0353
きっとこの人は、話が面白くないんだ。面白い話の材料を作らないといけない。まず、人生に興味を持つこと。この世に生まれて死ぬまで生きているのは、面白いことだと思いませんか。生まれてこなかったらつまんないし、学校へ行ったのは面白かったし、結婚したのは面白かったし、子どもを育てるのも面白いし、歳取った親とつきあうのも面白いし、仕事をするのも面白いし、みな面白い。面白いというのはファニー、おかしいというのではなくて、興味深いこと。やってみて、しんどいことも楽しいこともいろいろあって、やりがいのあることだと、まず思ってほしい。おしゃべりがヘタな人は、人生がつまんないと思っていると思う。だから、おしゃべりのネタがない。人生がどんなに面白いかというのを練習してほしい。團伊玖磨さんという作曲家がいて、「どうも自分は心の底から笑えない」と思った。これは笑うお稽古をするしかしょうがないと思って、テレビの前にマットレスを敷いて、ちょっとでもおかしいと、わざと転げ回って笑う。2,3か月もすると、凄く笑うのが上手になったと、彼は言う。笑うことひとつでも修業がいる。人生を面白がるには、相当修業がいると思う。人生は何なのか、若いときにはよくわからない。僕は大学生のころに、面白いと思った。とにかく。生きてみるということはやってみる値打ちのあることで、生きてみると、楽しいことが次々と起こる。楽しいこというのは苦しいかもしれない。失恋するとか、友だちに裏切られるとか、お金を落として、「あーなくなった、10万円が」とかかもしれないが、それはそれで興味深い出来事でしょう。まず、人生を面白がること。
アドラー心理学って、そのへんが当たり前だと思って作ってある。アドラーがそういう人だった。人生を楽しむ人。彼の生徒さんたちももともとそうだったのか、アドラーとつきあっているうちにそうなったのか、人生って面白い、子育てって面白い、夫婦生活って面白いと思うことにしちゃったので、あまりアドラーの本の中で強調されていないけど、でも、そうなんです。人生は生きるに値するものだと思ってほしい。その中でも特に面白いものを見つけてほしい。いろいろあるけれども、スポーツネタでも、芸能ネタでも、政治ネタでも、何でもいい。自分が心動くものを決めてほしい。誰に向かってもその話をすると、イヤがる人と喜ぶ人といる。喜ぶ人は友だちになれます。イヤがるか喜ぶか、話しをしてみるまでわかりません。話をすると、結構ついてくるかもしれないし、誰もついてこないかもしれません。
私は基本的に、人生忙しいので、スポーツネタはない。ゼロ。野球とか、まだやってるのかと思っているくらい。サッカーもどっかに書いてあったから試合したんだと思うくらいで、オリンピックも次は、どこが出るか知らないし、これは、私は話のネタにしないから、いらんところにエネルギー使わないから、スポーツ切り捨て。芸能も切り捨て。「こういう俳優知ってる?」と聞かれたら「知らん」で、そこで話は終わり。今時の俳優さんも歌手も何にも知らない。それでちっとも困らない。まったくそれでもって人生不自由しませんし、それでもって私とつきあってくれなければ、つきあってくれなくていいです。誰かとつきあうためにわざわざスポーツや芸能に興味を持とうと思わないから。みんな興味のないことにすごく興味があるんです。それでいいです。それでもつきあってくれる人はきっといるから。ゼロではないから。
だから、自分の好きなものを見つけることです。楽しい人生の中で、特にことさら楽しいものを見つけること。それを話題にして、向こうの話も聞く。「こんな面白い話があるんだけど」と言うと、「何それ、つまんない」と向こうへ行く人もいる。それでOK。傷つかない。うちの父親は変な人で、内気かな、無口かな、ただ彼は人生を面白がっている人です。とにかく。ネタが変わった人で、「とんでも古代史」が好き。古代についてのすごい嘘話みたいなとんでもない話で、超古代の文書(もんじょ)とかあって、超古代文字というのがあって、日本は実は宇宙人が降りてきて作った国だと書いてある。それを本気で読んで、「面白い話がある。聞けー」と言うから聞いていたけど、あれでも結構友だちはいたみたい。だから“モノ”は何でもいい。ネタを1つ作っておくこと。そうすると、お話できるようになるんじゃない。で、人生楽しんでない人と友だちになりたくない。いつも暗い顔して、「つらいんやー。友だちおらんしなー」と言っている人の話は絶対聞きたくない。精神科医をしていると、「人から嫌われる。誰にも好かれない」と言う患者さんが結構来るんです。「なんでかわかる?」と聞くと、「わかりません」。「あんたの話がつまらんからだ。ここへ来るときは、暗い顔をして『私は不幸や。みんなは私をわかってくれない』という話は聞き飽きてつまんないから、次から来るときは絶対面白いネタを持ってきて」と言うんです。「面白いネタを言わなかったら診察してやらん」と。大阪に住んでいる限りは、これは必修科目です。大阪でネタをふれなかったら、これは「しね」ですから。楽しいネタを探してください。(回答・野田俊作先生)