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スレッドNo.359

自由と放任

Q
 自由と放任をはき違えて、アナーキーになっているクラスをどのように援助したらいいでしょうか?担任は、問題だとは考えていないようです。

A
 担任が問題だと考えていないから、どうしようもないな。こんなのが多いです。『クラスはよみがえる』という本を書いて、激しく後悔しているのはこの部分で、アナーキーな教師が読むと、アナーキーの無政府主義的なやり方の口実にアドラー心理学を使ってくれます。それで結局、子どもたちに対する教育力や指導力がないのを、「実はこれが本当の教育だ」と言うんです。さっきの先生は、子どもが授業中に教室の中を歩いたりすることを悩んでいましたね。全然悩まない教師もいます。子どもが教室の後ろに集まって、ブラブラ歩いているのに。「あれでは授業になってないよ」と言うと、「あの子たちは誰にも迷惑をかけていないからいい」と言うんです。そんなのは授業と違う。かなり前に某県で、「これがアドラー心理学だ」と、そんな状態のクラスをテレビ局に公開して、放映した教師がいました。あれにはまいりました。
 ファシズムで、すごく強引に指導して、時に罰を使って、体罰まで使うかもしれなくて、それで子どもをまとめて、わりとちゃんとクラスがまとまっているというかまとめている教師と、アナーキズムでクラスがバラバラなのと、どっちが悪いかというと、アナーキズムのほうがずっと悪いです。それって、何も子どもに教えていないもん。ファシズムのほうは、何はともあれ何か教えている。ほんとはどっちも悪いんですがね。
 アドラー心理学は、そのどっちでもない第3の方法を教えようとしています。しかし、この第3の方法というのは、われわれのまだ知らない方法なんです。われわれが自分の子ども時代に学校の先生が教えてくれた方法は、たいていファシズムでした。今の学校でみんなが見る方法は、たいていがアナーキズムです。そうじゃない第三の本当に民主的な方法というのは、われわれはモデルを見たことがない。だから手加減がよくわからない。やりながら学んでいかないとしょうがない。
 親もそうです。親が子どもを育てるときも、最初はたいていの親がファシズムなんですけど、アドラー心理学式の育児をやると、初めアナーキズムになるんです。私はよく、「とにかく子どもに任せなさい」と言います。するとアナーキズムになって、そこで止まってしまうお母さんがたくさんいます。止まってはいけない。その次のことをやらないといけない。「子どもを勇気づける」ということを。子どもに「ちゃんと責任を取ってもらう」ということを教えないといけないんだけど、この段階になると、誰も知らない。
 今は、日本にアドラー心理学が根づいてかなりになりますので、うまく動ける人が増えました。その人たちに相談すれば、多少のアドバイスはもらえるけれど、でも、その人たちの家庭でやっていることをそのまま自分の家に持ち込んでも、うまくいくとは限らない。自分も違うし、子どもも違うから。だから、自分の家で創意工夫して、民主的な育児、アドラー心理学式の育児を自分でこしらえていかないと仕方ない。これがやがて世間の常識になって、学校もアドラー心理学式の民主主義で動いている、家庭も動いている、みんながそうなっているんだったらわれわれは楽で、そんなに創意工夫しなくても誰かの真似をすればいいですけれど、今のところはそうはいかない。学校もそうです。それはすごく大変です。学べないから。教えてもらえないから。自分で作らないとしょうがないから。でもそうしないことには、どうしようもないんです。
 ファシズムもアナーキズムも次の時代を作っていけないと思います。子どもたちをちゃんとした大人にする力がないと思います。だから、この先生にどう言えばいいかと言われても、言えることはありません。少なくとも一度は“自分のクラスで、本当に民主主義的なクラスのモデルをきっちり作って見せてあげること”が第一点。
 それから第二点は、“目標を一致させる”ということ。これは、アドラー心理学のカウンセリングの中でよく言うことで、養成講座の生徒さんたちが最初に一番悩むのがそれです。「お客さんとの目標を一致させなさい」。結局何を解決しようとしているのか、解決で「どうなろうとしているのか」をはっきりさせないとカウンセリングが始まらない。何となく話しているうちに、何となくわかるだろうとは思ってないです。
 例えば、登校拒否の子どもの親が来るとします。そうしたら、私が最初に目標を一致させたいのは、「親がその子どもと冷静に対応ができるようになってもらうこと」です。それが第一段階。そうでないと次の仕事ができない。さしあたって、子どもと感情的にならないで、普通に対話ができて、登校拒否なら登校拒否の問題について、お互いが冷静に話し合えるという地盤を作るというのが、第一の段階です。
 それができたら、次は「子どもが学校へ行けるようにどう援助するか」を学んでもらうこと。これが第二の目標になると思います。もしも、「親が子どもと冷静に話し合えるのが第一の目標です」と言って、「そんなのイヤです。子どもとは絶対冷静になれません。私はずっと子どもを怒り続けるし、あの子と話なんかしたくない。けれどあの子を学校へやりたい」と言われたら、それは無理です。子どもが学校へ行くことを援助する方法は、そんな道からは絶対に生まれないから、カウンセリングを断ります。
 目標が一致できない場合には、援助できないです。例えば、このアナーキズムの先生が、とても上手に民主的に動いているクラスを見て、「先生のところは何か子どもたちが生き生きとよく勉強して、よく言うことを聞いて、クラスがまとまっているけど、いったいどうしているの?」と聞きに来たら教えてあげられる。目標が一致したから。でも聞きに来なかったら、これでいいんだと思っていたら、教えてあげられない。その間は申し訳ないけれど、ちょっと放っておいて、自分のほうをしっかり充実させるしか方法がないんじゃないでしょうか。(回答・野田俊作先生)

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