子どもの内面に秘められた心
Q
最近、子どもの内面に秘められている心を理解できなくて悩んでいます。日ごろの関係の至らなさとは思いますが、どんな話しかけをしていったらいいのかわからないので、よろしくお願いします。
A
内面に秘められた心は、たぶんないと思う。あるかもしれないけど、たぶんないほうに賭けます。
親に話をしないということについては、2つ理由があります。1つは、何も考えてないからで、もう1つは、考えてるけど、親に話すともっと事態が悪くなると思っているから。そのどっちかです。
どっちにしても子どもは、さしあたって自分の力でやっていこうとしているんです。だから、子どもが自分の力でやっていくのを信頼しましょう。親子関係が変わってくると、話してくれることもありますしね。
高橋さと子さんのところにも3人子どもがいて、その子たちが順番に石垣島でお母さんがスマイル(「パセージ」の前身)をするのについて行ってます。一番上の子は27歳かな?今回は、一番末のお嬢ちゃんが来ていて、彼女は22歳じゃないかな?それくらいの年齢の娘さんが、母親と一緒に遠いところに旅行に行くというのは、これはちょっと素敵なことだと思いませんか。萩昌子さんのところは、今度息子と一緒に、モルジブへダイビングに行きます。この子も20歳になりましたが、20歳の男の子が母親と一緒にダイビングに外国まで行くというのも、すごい素敵なことだと思いませんか。娘さんはこの間、お母さんと一緒にスペインに行きました。遊び回っていますね、この母子は。
そういう関係になるには、長い時間の積み重ねがあって、本当に横の関係でつきあっていて、親は助けにはならないかもしれないけれど絶対に邪魔にならないと、子どもが確信しているんです。アドラー心理学をしっかりやれば、親は子どもの望まないことを押しつけない。それはもう、絶対確実だと思います。
子どもを助けられないことはあります。例えば、子どもが恐喝に遭って2万円盗られて、すごく落ち込んでいる。そのときは助けられないんです。子どもが落ち込んで、「2万円も盗られちゃった」と言うと、「残念だったね」くらいしか言えない。
よく考えてみると、子どもは別に、「助けてほしい」と言っているわけではない。ただ、「自分は2万円盗られて馬鹿だった。この次からは、2万円も持って歩かないようにしよう」とか、「ヤバいやつのいるところには、近寄らないようにしよう」とか、子どもが自分で勝手にいろんなことを決心していくのに、しゃべりながらのほうが決心しやすいから、私に向かってしゃべっているだけなんです。
こんなふうに助けられないこともあるけど、でも助けられることもあります。うちの上の娘が、高校を出て専門学校に行きましたが、1年したらイヤになって、「お父さん、学校やめたいんだけどどう思う?」と言うから、「私がどう言うと思う?」と聞きました。すると、「やめてもいいと言うと思う」と言いました。実際私は「やめてもいいよ」と言って、娘は学校をやめました。
どんなことであれ、子どもが決めたことに反対しないことにしているんです。極端ですが、ひょっとしたら、「自さつします」と言っても反対しないかもしれません。まあ、「自さつ、退職、離婚はいつでもできるから、もう少し延ばしたほうがいいと思います」くらいは言うかもしれません。ですが、反対はしない。手伝えることがあれば手伝う。
そのへんがはっきりしてくれば、子どもの話が聞けるんじゃないかな。何しろ、こっちがありがたい言葉をあげようと思っていると、子どもは話をしてくれない。子どもにとってはありがたくないからね。
秘められた心なんてあるかなあ。言いたくない心はあるけど……。(回答・野田俊作先生)