論語でジャーナル
38,子曰く、君に事(つか)うるには、その事を敬(つつしみ)てその食を後(あと)にす。
先生が言われた。「主君に仕えるには、仕事を大切に行うこと。俸給(給料、待遇)のことは後回しに考える」。
※浩→主君に仕える(官職に就いた)場合には、まず誇りを持って懸命に職務を遂行することを考えて、俸給のことは後回しにせよということです。今の就職試験でもこれは通用するでしょう。履歴書や面接の際の「志望の動機」に、もしも「給料が高いから」と書いたり言ったりすると、きっと不合格でしょう。昔、私が大学を卒業して、井原市の新設高校への赴任が決まって、高校1年のときの担任・大月邦彦先生のお宅にご挨拶に行きました。先生からは「漢文」を教わりました。今もときどき漢詩・唐詩を思い出したり、新たに調べてアップしたりできるのは、まさしく大月先生のおかげです。1年の担任はもうお1人、岩○先生という物理の先生がいらっしゃいました。この先生にはあまり好感を持てませんでした。お2人ともすでにお亡くなりですが、大月先生は、その面影も口調もしっかり覚えています。お宅は奉還町の裏筋にありました。高校への奉職が決まったことをお伝えしたときの先生のお言葉は、「校長先生に忠実を尽くしなさい」でした。さすが漢文の先生です。先生から、「白文」に“返り点”をつけると、日本語の古文と同じように読めることを教わって感動しました。先生の授業で習った漢詩で、今もはっきり思い出せるトップは、李白の「静夜思」です。
牀前(しょうぜん) 月光を看る
疑うらくは是 地上の霜かと
頭(こうべ)を挙げては 山月を望み
頭を低(た)れては 故鄕を思う
「春暁」も覚えています。
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少
どんどん思い出します。たくさんあって網羅できませんが、今一番好きなのは、杜牧の「江南春」です。
千里鶯啼いて緑紅に映ず
水村山郭酒旗の風
南朝四百八十寺(しひゃくはっしんじ)
多少の楼台煙雨の中
友人と一献交わすとき必ず思い出すのは、王維の「元二の安西に使するを送る」です。
渭城(いじょう)の朝雨(ちょうう)輕塵(けいじん)を潤す
客舎(かくしゃ)青青(せいせい)柳色(りゅうしょく)新たなり
君に勧む更に盡くせ一杯の酒
西の方(かた)陽關(ようかん)を出ずれば故人(こじん=知っている人)無からん
「君に勧む更に盡くせ一杯の酒」のところがいつ詠んでもジーンときます。平田信彦さんを思い出します。